■プライベートジェットに乗って気候危機を訴える矛盾

 気象学者のピーター・カルマス(Peter Kalmus)氏は、ゴールデン・グローブ賞の授賞式で招待客1500人のメニューを変えることで、同イベントのCO2排出量をおよそ10分の1に減らし、10~15トンのCO2排出量を削減できたはずだと指摘する。

 たった一人の有名人が環境保護について取り上げるだけでも、波及効果によってその恩恵がより広範囲に及び、人々の意識を高めたり、政策に影響を与えたりすることさえあるとカルマス氏は言う。

 だが、大々的に宣伝されたハリウッドのこの試みに、世界中から称賛の声が集まったわけではない。

 多くのスターたちは偽善者との批判を浴びている。その背景には、仏カンヌ(Cannes)や伊ベネチア(Venice)、カナダ・トロント、さらには米ユタ州パークシティー(Park City)など世界各地で行われる映画祭に参加するため、毎年多数の映画業界関係者らが乗り物を使って移動している現実がある。

「プライベートジェットに乗りながら、気象の緊急事態について声を上げるのは問題だ」とカルマス氏は指摘する。

 セレブであるかどうかにかかわらず、気候問題への意識を高めようとする人は歓迎されるべきだが、最大の影響力を持つのは有言実行する人だとカルマスは付け足した。

 カルマス氏の推定によると、ファーストクラスで年間2回往復した場合のCO2排出量は、12~24トンに上るという。