■ライブ再生モード

 2017年には天文学者らが反復FRBの発生源を突き止めることに成功している。だが、単発FRBでは、その位置特定においてはるかに大きな難題に直面することになった。どこを観測すべきかが分からないのだ。

 この問題に対処するため、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のキース・バニスター(Keith Bannister)氏率いる研究チームは、これまでにない考え方を模索する必要があった。

 バニスター氏は、AFPの取材に対し「これはライブの再生モードのようなものと考えることができる。FRBを探査するために毎秒約10億個の観測データをコンピューターに調べさせ、そこからFRBが含まれるデータを見つけ出すことを試みた」と説明した。

 研究チームは今回、地球から約36億光年の距離にある高速電波バースト「FRB180924」の発生源を正確に特定した。観測には36基のパラボラアンテナで構成されるCSIROの電波望遠鏡「オーストラリア平方キロメートル干渉計パスファインダー(ASKAP)」を用いた。

 研究チームは、南米チリにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)を用いて発生源の銀河の画像を撮影し、米ハワイ州にあるW・M・ケック天文台(W. M. Keck Observatory)の大型望遠鏡とチリにあるジェミニ南望遠鏡(Gemini South telescope)を用いて銀河の距離を測定した。

 過去の研究で位置が特定された反復電波バースト「FRB121102」は、若い恒星が活発に形成されているわい小銀河から発生していたことが明らかになっている。その発生源については、極めて強力な磁場を持つ中性子星の一種「マグネター」に基づくさまざまなモデルが提唱されている。

 だが、今回の単発電波バーストFRB180924は、古い恒星を含む巨大銀河の外縁部から発せられており、過去研究の理論には適合しない。これは、FRB180924の発生にはまったく異なる原動力が関与しており、FRBの発生には複数の経路が存在することを示唆している。