【5月3日 AFP】陸上女子中距離のキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)は2日、国際陸上競技連盟(IAAF)の新規則への異議申し立てが棄却されたことに反骨心を示すと同時に、自身のツイッター(Twitter)に投稿した謎めいた書き込みで引退をにおわせた。

 五輪の女子800メートルで2度の金メダルに輝くセメンヤは、女子選手のテストステロン(testosteron)値を制限する新規則をめぐりIAAFを提訴していたが、1日にスポーツ仲裁裁判所(CAS)から訴えを退けられた。同選手はこれに反発するかのごとく、3日にカタールの首都ドーハで行われるダイヤモンドリーグ(IAAF Diamond League 2019)開幕戦で、800メートルにエントリーした。

 スイス・ローザンヌ(Lausanne)でのCASの審理で結果が出るのを待って同大会へのエントリーを決める意向を示していたというセメンヤは、いわゆる「高アンドロゲン」もしくは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」のアスリートが女性として競技を続ける場合、人工的に体内のテストステロンを基準値まで下げることを強要するIAAFの方針に異議を唱えていた。

 この新規則は今月8日以降、女子の400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目に適用される見通しとなっている。

 セメンヤは2日、自身のツイッターアカウントに「引き際をわきまえるのは知恵、実行に移すのは勇気、頭を高く上げて去りゆくのは尊厳」「彼らが私を笑うのは、私が違っているから。私が彼らを笑うのは、彼らがみんな同じだから」と投稿して競技からの引退を示唆した。

 セメンヤが臨席しなかったドーハでの会見でIAAFのセバスチャン・コー(Sebastian Coe)会長は、女子競技における公平性をつくりだすものとしてCASの裁定を歓迎し、「これは非常に単純明快だ。あらゆる国際スポーツ連盟にとって、非常に単純明快なことである」「運動競技を分類するものは二つある。それは年齢と性別であり、われわれはこの両方を厳格に保護する。CASがこの原則を支持したことを心から喜んでいる」と述べた。

■「人生は不公平」

 ダイヤモンドリーグ・ドーハ大会にはリオデジャネイロ五輪の女子800メートルで銀メダルを獲得したフランシーヌ・ニヨンサバ(Francine Niyonsaba、ブルンジ)と、同銅メダリストのマーガレット・ワンブイ(Margaret Wambui、ケニア)も出場し、再び金メダリストのセメンヤと対決することになっている。

 テストステロン値が問題視されながらも、セメンヤと違ってこれまで強制的な高アンドロゲンの検査は行われていないワンブイは、自身のツイッターに「人生は時として、とても不公平」と投稿してIAAFの規則を批判した。

「全ての出来事には理由があるの、キャスター」「この世界では私たちアフリカ人は何も言えないのが現実であり、それは私たちにはどうすることもできない。本当に残念で、とてもつらいこと」

 テストステロン値を下げるホルモン投薬を拒絶する場合、セメンヤはIAAFの新規則では適用外となっている5000メートルへの転向を決断する可能性がある。(c)AFP/Robin GREMMEL