【5月2日 AFP】陸上女子中距離のキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)が、女子選手のテストステロン値を制限する国際陸上競技連盟(IAAF)の新規定に異議を申し立てていた件で、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は1日、同選手の訴えを棄却した。その一方でCASは、IAAFの規則は「差別的」だとして不安視している。

 CASの裁定により、テストステロン値の高い女子選手は今後、治療などで数値を下げなければ、特定の大会で女子選手として出場することができなくなる。

「高アンドロゲン」もしくは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」のアスリートを対象とするIAAFの新規定は、女子スポーツの将来を大きく左右する可能性が高く、裁定をめぐって意見が大きく分かれている。

 CAS側は規定について「差別的」だと認めた上で、「女子選手の完全性を保護するというIAAFの目的を達成する手段として、このような差別は必要かつ合理的、そして適切な手段である」と述べた。

 五輪2連覇中のセメンヤは、担当弁護士を通して「IAAFは10年間にわたり、私の足を引っ張ろうとしてきた」とコメント。「しかしながら、今回の決定は私をさらに強くする。CASの裁定は私を止められない。再び困難を乗り越え、南アフリカや世界中の若い女性と選手たちに刺激を与え続けたい」と付け加えた。

 また、南アフリカで女性問題を担当しているバタビレ・ドラミニ(Bathabile Dlamini)大統領府相は、女性の体を侵害しようとしているとしてIAAFを非難し、今回の裁定に「失望した」と話している。

 一方のIAAFは、CASの裁定について「うれしく思う」と述べ、当初昨年に採用するもセメンヤの提訴を受けて保留になっていた今回の新規定は、今月8日から適用されると発表している。(c)AFP/Eric BERNAUDEAU