■首相さえも

 ソチ冬季五輪が開催された2014年には、当時のオスロ市長ファビアン・スタング(Fabian Stang)氏が、5万5000人の市職員に仕事中の観戦禁止を促して大ニュースとなり、当然のごとく猛反発に遭った結果、やむなく態度を軟化させた。また、ノルウェーで開催された24年前のリレハンメル五輪では、開会式の数時間前、国中が五輪に熱狂した隙にオスロの美術館からエドバルト・ムンク(Edvard Munch)の「叫び(The Scream)」が盗まれるという事件まで起こった。

 それでも、タブレット端末や携帯電話で大会に見入っている姿が目撃されているアーナ・ソールバルグ(Erna Solberg)首相は、「もちろん、短期的には五輪で(仕事の)能率は下がるかもしれないが、ノルウェーが頑張れば国民は幸せになり、そして幸福度が増せば能率も上がる」と話している。

 その視点で言えば、ノルウェー勢は頑張るどころか飛び抜けた成績を残している。人口わずか530万人の小国は、平昌のメダルランキングで1位を独走し、冬季五輪の歴代獲得メダル数でもロシアと旧ソ連、さらに東西ドイツの合算に匹敵する3強に位置している。個人の通算メダル数でも、14個のマリット・ビョルゲン(Marit Bjorgen)、13個のオーレ・アイナル・ビョルンダーレン(Ole Einar Bjoerndalen)、12個のビョルン・ダーリ(Bjorn Daehlie)氏でトップ3を独占している。

 では、五輪の興奮が収まった後は、普段通りの仕事に戻るのがつらいのではないだろうか。カフートのもう一人のスポーツファン、アレクサンデル・レメン(Alexander Remen)さんは「多少、抜け殻みたいにはなるだろうね」と認める。「でも、そのあとはノルウェーがどれだけたくさんメダルを取れたかを振り返って、まだまだ楽しむんだ」 (c)AFP/Pierre-Henry DESHAYES