【1月25日 AFP】日本相撲協会は25日、稀勢の里(Kisenosato)の横綱昇進を決定し、ファンが長年待ち望んだ日本出身の横綱が久しぶりに誕生した。

 前週末に閉幕した大相撲初場所で初優勝を果たし、横綱昇進が確実視されていた稀勢の里は、正式に昇進を伝えられると「謹んでお受けいたします。横綱の名に恥じぬよう、精進いたします」と答えた。そして記者団に対しては「少しほっとしました。今はこれまでお世話になった方々への感謝の気持ちでいっぱいです」と話している。

 長い歴史と伝統を持つ相撲だが、1990年代に米ハワイ(Hawaii)出身の巨漢力士が登場すると、その後のモンゴル出身力士の台頭と、外国出身力士に席巻される時代が長く続いた一方で、日本出身の横綱は2003年の貴乃花(Takanohana)引退を最後にしばらく途絶えていた。

 近年は自国にモンゴル相撲の伝統を持つモンゴル出身力士が一大勢力を築き、日本出身の横綱がなかなか現れないことに、長年の相撲ファンや関係者は複雑な思いをかみしめてきた。

 25回の優勝という素晴らしい強さと、素行の悪さの二面性を持っていた朝青龍(Asashoryu)が引退したあとも、白鵬(Hakuho)が角界に君臨。先場所まで3人の横綱はすべてモンゴル力士で占められ、残る二人の日馬富士(Harumafuji)と鶴竜(Kakuryu)も、それぞれ8回と3回の優勝という実績を持っている。

 日本人力士は1年前、元大関の琴奨菊(Kotoshogiku)が10年ぶりとなる天皇賜杯を手にし、周囲に期待を抱かせたが、勢いは長くは続かず、ファンはもちろんのこと、協会をも大いに落胆させていた。白鵬が37回の優勝を積み上げ、大鵬(Taiho)の最多優勝記録を塗り替えたことも、協会関係者を悩ませた。

 その他にも、近年の角界はいくつかの醜聞にまみれてきた。モンゴル出身力士については「品位」が問題となり、朝青龍は泥酔して一般人に暴行を加えたことがきっかけで引退を余儀なくされたほか、他の力士を挑発する、風呂場で口論を起こす、けがでの休場中にサッカーに興じているところを写真に収められるなど、好意的な人も擁護できないほど、現役中から問題行動を繰り返した。

 また、力士による八百長や、相撲部屋と暴力団とのつながりが発覚したことや、大麻所持の問題、新弟子が同部屋の人間に暴行されて死亡するなど、この10年ほどは、閉じられた社会である角界の根幹を揺るがすような事件が相次いでいた。(c)AFP/Alastair HIMMER