■「選択肢はない」、不安胸にスーダンへ

 エマージェンシーにメールで連絡を取ってみると、レイナルドさんの治療を無料で行うことに応じてくれた。トルコ航空もスーダンまでの旅費を出してくれると申し出てくれ、姉弟は準備に取り掛かったが、心配がないわけではなかった。

 まず、内戦や感染症など暗いニュースばかり流れてくるスーダンについてほとんど知識がなかったことだ。それから、もし手術がうまくいかなかった場合、レイナルドさんの遺体はスーダンの地に埋められると言われたこともショックだったと、サラさんは振り返る。「でもそのリスクをとるより他に選択肢はなかった」

 エマージェンシーがハルツームに「サラーム・センター(Salam Centre)」を開院したのは2007年のこと。スーダン政府と国際的な支援により、これまでに6800件ほどの心臓手術を行ってきた。 

 レイナルドさんの手術を手掛けたメディカル・ディレクターのアレッサンドロ・サルバティ医師は、同病院の精神はシンプルだと語る。「私たちは治療代が払えないために死んでしまうかもしれない貧しい人たちを助けたいだけだ」と、ローマ(Rome)出身の外科医である彼は言う。「これはエマージェンシーのモットーだ」

■「人生第二のチャンスもらい幸せ」

 患者は検査を受けた上で選ばれ、いったん選ばれると治療代は無料だ。退院してからもサポートは続く。もしレイナルドさんが必要な薬代を払えなければ、エマージェンシーが支給し続ける。

 レイナルドさんは母国に帰れる日を楽しみにしている。「人生第二のチャンスをもらってとても幸せだ」と彼は語った。(c)AFP/Tom Little