【3月16日 Peopleʼs Daily】蘇州博物館の本館は江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)の旧市街・東北街(Dongbeijie%%)にあり、いつも来館者でいっぱいだ。

 この博物館は総床面積1万9000平方メートル、2万5000点(セット)を超える収蔵文化財を誇り、年間平均250万人の来館者がある。著名な中国系米国人の建築家イオ・ミン・ペイ(Ieoh Ming Pei)の手で設計された蘇州博物館は、2006年の開館以来その人気は衰えることを知らない。

 しかし、多くの人が知らないのは、この建物がかつては、高いエネルギー消費、高い運営コスト、高い二酸化炭素排出量の施設であったことだ。

 蘇州博物館の謝暁婷(Xie Xiaoting)館長は取材に対し、毎日数万人の観光客が快適に過ごせる環境を作り、同時に館内の文化財に良好な「体感(環境)」を与えるためには、年間を通じて温度と湿度を一定に保ち、高いレベルの空気清浄度を維持する必要があり、そのために多くのエネルギーが必要だと説明した。

 しかし同館は、このエネルギー多消費状況の変革を目指し、21年から「カーボンニュートラルな博物館」の実現に着手した。

 低炭素運営を実現するには、まず「エネルギー消費の実情計算」を行い、炭素排出の「家計(博物館運営に必要なエネルギー量)」を把握する必要がある。このため、蘇州博物館は清華大学建築エネルギー節約研究センターの魏慶芃(Wei Qingpeng)教授のチームを招き、博物館全体の包括的な「診断」を実施した。

「あまりにも難しかった」と魏教授は言う。

「博物館の設備を停止することはできません。さもないと文化財が『負傷』してしまいます。また、作業の多くは『館のわずかな空き時間』を縫って行うしかありません。しかも多くの設備や配管は1階と地下1階の間の狭い隙間に隠れていて、作業員は計器を持ち、身をかがめ、それぞれの測定地点に穴を開けて、データを測定するしかありません」、魏教授はこの診断の困難さをこう説明する。

 2年以上にわたる努力の末、魏教授のチームは、館の建築構造、材料、設備などについて多角的な測定と分析を行い「診断レポート」を完成させ、併せてカーボンニュートラル実現のためのソリューションプランを提案した。

 館の文化財にとって、摂氏21度前後の室温、湿度50パーセント前後が最適な環境だと確認された。では、館全体をどのように一定の温度と湿度に保つのか?

「冷気と暖気を一定の割合で混合することで、望ましい温度と湿度を調整することができます」、館の設備工事部の王建(Wang Jian)主任は、地下1階にある機械室の冷水ユニットとボイラーを指さしながら「これらの機器の性能が館のエネルギー効率に直接影響します」と説明した。
王氏によると、開館以来20年近くを経てかなりの設備が時代遅れになり、エネルギー消費量が大きいだけでなく、毎年多額のメンテナンス費用も掛かるという。

 現在、館では、古いスクリュー式冷却装置を最新式の「磁気浮上式インバーター制御遠心式冷水機ユニット」に交換し、電力消費量を旧式装置と比較して50パーセント以上削減できた。

 博物館の屋上に立ち北西のコーナーを見ると、2つの巨大なファンがゆっくりと回転しているのが見える。蘇州科技園区にある科学技術会社で技術責任者を務める孫潔(Sun Jie)さんの説明によれば、これは博物館のため特別製作した「可変流量高効率冷却塔」である。以前は6台の冷却塔が必要だったが、同社の研究開発チームが冷却塔の内部構造を改良したことで、今では2台の冷却塔で十分になったという。また、空いたスペースには4台の「空気熱源式ヒートポンプ」が設置された。以前はガスボイラーで水を温めていたが、この新型のヒートポンプは、空気から熱を「借りる(熱交換する)」ことができるため、二酸化炭素排出量の大幅削減に成功した。

 設備の更新に伴い、博物館では新しいエネルギー生態系が徐々に出来てきた。しかし、交換した設備が最新鋭なものでも、これらが互いにバラバラに作動し、連携が取れていない場合は、全体のエネルギー消費は十分には削減されない。このため、魏教授は、館全体の制御に見合った「デジタルブレーン」を設置し、全ての機器をブレーンに接続した。いわば博物館専用の特製IoTだ。

 魏教授によると、現在彼のチームは「デジタルブレーン」のアップグレードに取り組んでいる。このアップグレードで、それぞれの文化財にどれだけのエネルギーを「供給」する必要があるか、また、各展示ケースに1日当たりどれだけの空調が必要か、といったことが今後は正確に設定できるようになるという。

 蘇州博物館は25年までに、安全で調和のとれた、環境に優しく知能的な「スマート博物館」へと変貌を遂げる予定だ。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News