【2月6日 東方新報】業界の専門家によると、米国からの制裁が相次ぐ中、中国の独自開発の生成AI「深度求索(DeepSeek)」を多くの中国企業がフォローし、イノベーションと協力を推し進め、世界的なブレークスルーを遂げる動きが増加しているという。

 米国の国家安全保障会議が、米国のAIテクノロジー業界を大きく揺るがした中国民間スタートアップ企業「深度求索(DeepSeek)」が開発した非常にコスト効率の良い生成AI大言語モデル「DeepSeek」がもたらす国家安全保障上の影響について調査を始めたと報道された後、業界の専門家がコメントしたものだ。

「DeepSeek」はすでに278社の企業を含む「国産のサプライチェーンの連携」を構築しており、主要なキーとなる知的財産関連の国内生産率を、2022年時点の19パーセントから現在の64パーセントまで増加させている。

 中国工業と情報化部・情報通信経済専門家委員会の盤和林(Pan Helin)委員は「米中のAI競争が繰り広げられる中、『DeepSeek』は、ハイエンドチップに頼らず、演算能力を節約する大規模言語モデルの新たな技術的経路を切り開いた」と述べた。

 また「これは、米国が中国企業を抑え込むために作り出したコンピューティングパワーの罠を、『DeepSeek』が無事に潜り抜けたことを意味する。さらに重要なのは、地政学的な障壁よりもむしろイノベーション能力こそが、グローバルなAI競争に勝つためのカギとなることを、再び証明したことだ」と付け加えた。

 米国による中国へのチップ輸出規制にもかかわらず、「DeepSeek」のAIモデルは無事に創り上げられた。市場調査会社ジェフリーズ(Jefferies)のアナリストは「DeepSeek」の最新モデルのトレーニングコストはわずか560万ドル(約8億6929万円)で、米国メタ(Meta)の大規模言語モデル「Llama」のコストの10パーセント以下だと推定している。

 盤氏は「今後このようなブレークスルーを遂げるのは、中国の企業が唯一ではないだろう」とも予想している。

 米国政府が「DeepSeek」を阻止しようとしているにもかかわらず、DeepSeekが1月に新しいAIモデル「R1」を発表して以来、米国のテクノロジー企業はこぞってこのモデルを採用しようとしている。

「オープンAI(OpenAI)」の投資者であるマイクロソフト( Microsoft )は先週、同社のクラウドコンピューティングプラットフォーム「Azure」で「R1」のサポートを開始した。

 また、米国トップの半導体メーカー「エヌビディア(Nvidia)」は6日から「R1」モデルを、同社が運営する「NIMマイクロサービス」のユーザーへの提供を可能にした。

 同社は「R1モデルは最先端の推論能力、高い推論効率、そして一部のタスクではトップクラスの精度を提供できる」と述べている。

 北京市社会科学院の研究者は「米国はAIを覇権維持のためのツールとして捉えているが、『DeepSeek』はオープンソース技術とグローバルな無料アプリケーションで人類に貢献するという使命を担っている。中国のAI開発に対するビジョンは、資金力だけでなく、コラボレーションとイノベーションの文化の成長によっても後押しされ、ますます止められないものになっている」と強調する。

 中国の通信機器最大手「華為技術(ファーウェイ、Huawei)」のクラウドサービス部門と中国のAI企業「硅基流動(SiliconFlow)」は1日、ファーウェイの「Ascendクラウドサービス」をベースとした「DeepSeekR1/V3」推論サービスを共同で立ち上げ、稼働を開始したと発表した。

 両社は「これによって、モデルを大規模環境で安定的に実行することが可能となり、商業ビジネス分野のニーズを満足することができる」と説明している。

 清華大学(Tsinghua University)コンピュータサイエンス・テクノロジー学部の劉知遠(Liu Zhiyuan)副教授は「『DeepSeek』はAI開発で米中の格差が大幅に縮小したことを示した。ただし、DeepSeekはモデルとサービス能力の拡大という面で依然として増大する課題に直面しており、AI技術はまだ急速に進化の過程にある」と指摘する。(c)東方新報/AFPBBNews