【2⽉2⽇ Peopleʼs Daily】中国が最終形を目指して構築しつつある最新の衛星測位システムは北斗(Beidou)3号と呼ばれる。北斗3号の名称は個別の衛星ではなくシステム全体を指す。中国が北斗衛星測位システム(以下、北斗)に取り組み始めたのは1994年だった。北斗1号は中国国内をカバーし、北斗2号ではアジア太平洋地域に拡大された。全世界をカバーする北斗3号の供用開始は2020年7月31日だった。

 北斗3号の重要な技術面の課題は、衛星間の高効率の測位と通信を実現することだった。中国の研究者は独自の道を歩み、衛星と衛星、宇宙船と宇宙船のデータ伝送と距離測定機能のシステムを開発した。北斗3号を運用するための地上基地は中国国内にあるが、このシステムを使うことで、ある衛星が地球の反対側にあっても他の衛星を経由しての通信が可能だ。北斗の構築には中国の400社以上の組織の30万人以上の研究者が共同で難関突破を進めた。

 北斗3号用衛星の林宝軍(Lin Baojun)首席総設計者らは技術開発の効率を上げることを念頭に、衛星の全体構造、熱制御など10以上のサブシステムを電子工学、制御、構造、負荷の四大機能ブロックにまとめてシステム構造を簡素化し、全体の信頼性を高めた。そして検証を繰り返して成熟した部品と製造プロセスを採用することで、世界の衛星製造をリードする革新的な技術を取得した。北斗3号では衛星の中核機器部品の国産化率を100%にした。

 中国電子科技集団(CETC)ネットワーク通信研究院の高級エンジニアである鄭暁冬(Zheng Xiaodong)氏は、北斗測位地上システムの建設に20年余り従事しており、チームを率いて中国独自の北斗の民間用ショートメッセージ通信機能を開発した。

 北斗以外の衛星測位システムでは、ユーザーは自分がどこにいるかを知ることしかできない。しかし北斗では、それに加えて自分のいる場所と状態を他者に伝えることができる。この機能により、ユーザーは地震に遭遇したり、海上で遭難したりして他の通信手段が失効した場合でも、北斗によるショートメッセージ通信で救助を要請できる。

 開発上の大きな課題は、北斗のショートメッセージ通信を利用するためにスマートフォンに内蔵させるチップが、超小型でありながら大出力の送信能力と高感度の受信能力を備える必要があったことだった。鄭氏らのチームは電波の高感度で高速な捕捉や信号処理部分の一体化設計といった重要な技術課題を克服し、世界初の低コスト・低消費電力型の北斗のショートメッセージ利用のための携帯電話内蔵用のチップを開発した。

 中国では2500か所以上のダムが北斗によるショートメッセージ通信を利用して水関連の監視を行っている。北斗の高精度測位チップを搭載したシェア自転車は1000万台を突破した。北斗のショートメッセージを利用できる携帯電話も発売された。北斗は今や、各分野に大きな力を付与して発展を推進する重要なエンジンだ。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News