■問題は故人の同意が得られないこと

 英バース大学(University of Bath)の「死と社会センター(Centre for Death and Society)」の客員研究員、タル・モース(Tal Morse)氏は、ゴースト・ボットが慰めになる可能性もあるとした上で、こうしたAI技術の心理的・倫理的な影響を把握するには、もっと研究を重ねる必要があると警鐘を鳴らす。

「ここでの重要な疑問は、ゴースト・ボットが、模倣するように設計された本人の人柄にどこまで『忠実』であるかだ」と懸念を示した。

「ゴースト・ボットが、その人物の思い出を『汚す』ようなことをしたら、どうなるのだろう」

 もう一つ、判断に困る問題は、故人の同意が得られないことだと指摘する専門家もいる。

 香港大学(University of Hong Kong)の哲学者で、AIとその社会的影響を研究しているネイト・シャラディン(Nate Sharadin)氏は、会話や行動を模倣する許可は恐らく要らないだろうが、AIでつくり出したキャラクターに、本人の実際の言動以外のことをさせるには許可が必要かもしれないと話した。

 スーパー・ブレーンのチャン氏は、すべての新しい技術には「一長一短がある」と話す。このサービスが悪影響を及ぼしかねない依頼者には応じないとして、娘の死後、自殺を図った女性を引き合いに出した。その上で、「必要としている人に私たちが手を貸している限りは、何の問題もないと思う」と主張した。

 冒頭のウーさんは、息子のシュアンモーさんはAIで自身がよみがえることを「おそらく望んでいたはずだ」と語った。

 墓前で妻が泣き崩れる傍らで、「いつかメタバースで、私たちみんなで再会することになるよ」とウーさんはシュアンモーさんに呼び掛けた。

「テクノロジーは日々進歩している。時間の問題だ」

 映像は2023年11月に撮影。(c)AFP/ Matthew WALSH