■元彼のアバター依頼も

 ウーさん夫妻は、英エクセター大学(University of Exeter)で会計学と金融学を学んでいた一人息子、シュアンモーさんを2022年に脳卒中で失った。

 スポーツが大好きで、死後に臓器提供したシュアンモーさんについて、ウーさんは、「とても豊かで変化に富んだ人生を送っていた」「いつも人を助けたいという気持ちや正義感を持っていた」とAFPに語った。

 中国で「チャットGPT(ChatGPT)」などの対話型AIがブームになったことを受け、ウーさんはシュアンモーさんの写真や映像、音声記録を集め、顔と声を再現してくれるAI企業に何千ドルも投資した。

 今のところ出来は拙いが、ウーさんは、シュアンモーさんに関する膨大な情報を集めたデータベースを構築するため、作業チームも立ち上げた。強力なアルゴリズムに組み込み、息子の思考・会話パターンを正確に模倣できるアバターをつくりたいという。

 米国にも近年、故人をAI技術でよみがえらせる「ゴースト・ボット」の専門企業が数社誕生した。

 しかし、中国のAI企業、スーパー・ブレーン(Super Brain)の創業者で、ウーさんにも協力していたチャン・ツーウェイ氏は、この業界は中国で急成長していると説明した。

「AI技術に関して、中国は世界でトップクラスだ」とし、「しかも、中国には感情的な面でこうしたAIを必要とする人が大勢おり、市場の需要に関して私たち中国企業は有利だ」と話した。チャン氏によれば、スーパー・ブレーンでは、1万~2万元(約21万~42万円)の料金で、約20日間かけて初歩的なアバターを作成している。

 アバターの種類は、故人から、子どもと一緒に過ごせない生存中の親、そして賛否両論あるが、依頼者の女性が未練を抱く元彼まで、多岐にわたる。

 同社では、依頼者が失った相手の顔と声にデジタルで差し替えたスタッフとビデオ通話で会話ができるサービスも提供している。