【3月19日 東方新報】今年、中国の大学卒業者は1170万人を超えると予想され、過去最高を更新する見込みだ。今、就職活動のピーク「ゴールデン3月、シルバー4月」を迎えているが、就職市場はどのように変化しているか?卒業生はどのように求職活動をすれば良いのだろうか?

 複数の業界関係者の話によると、技術や産業の発展に伴い、新しい業界では人材需要が急増し、多くの就職チャンスが生まれている。また、従来の就職観ではあまり評価されてこなかった分野の待遇が実は優良であるという。

■新しい産業が新しい職種を生み出す

 中国労働関係学院の李洪堅(Li Hongjian)講師は、伝統的な製造業や不動産など、かつて多くの人材を吸収していた産業は、自らの発展や技術革新により、雇用吸収能力が低下していると指摘する。しかし、一方で、デジタル経済の台頭により、人工知能や新エネルギーなどの産業が発展し、これら新興産業関連の研究開発や応用分野の人材が不足しているとも指摘している。

 インターネット大手企業の春期採用が相次いで開始され、百度(Baidu)、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)、騰訊(テンセント、Tencent)はいずれもAIGC(AI-Generated Content)マルチモーダルシニアアルゴリズムエンジニア、テンセントのAIモデル「混元(Hunyuan)」AIGCアルゴリズム研究員、混元大規模モデル製品マネージャーなど、動画生成AI「Sora」に相応するような職種を多数募集している。また、国内の大手や中小の科学技術型企業も、みなAI関連の職種を募集している。

 北京市に拠点を置く人材サービス企業「智聯招聘(Zhaopin)」の李強(Li Qiang)副総裁は、ハイエンド製造、新エネルギー、産業の高度化のニーズを満たすサービス業が順調に発展しており、その分野の技能職や専門サービス職の将来性は非常に有望だと見ている。

 李氏は、行政の政策支援と産業のデジタル化転換の推進により、ハイエンド製造業の採用規模は高い水準を維持していると指摘する。同社のオンライン求人データベースの観測データによると、今年の春節(旧正月、Lunar New Year)後の第3週目で、ハイエンド製造業の工業自動化、航空宇宙分野の研究・製造業の求人数は、それぞれ前年同期比6.5パーセント、6パーセント増加していた。ハイエンド製造業の持続的な発展で、包装工、一般工、技能工などの求人数も明らかな増加傾向を示しており、新エネルギー、電気、電力業界の求人需要は大幅に伸びているという。


■一部の業界で「逆張り」求職が有効か

 大学生の職業選択の因習的な観念に阻まれ、人材不足に悩む業界は存在する。しかし、そういう業界の待遇は、実は悪くはない。大学卒業生は「逆張り」求職を検討してみるのもよいかも知れない。

 かつて厦門大学(Xiamen University)嘉庚学院で教鞭を執った人材開発のシニアコンサルタント・陳暁霞(Chen Xiaoxia)氏は昨年、「アモイ市集美区(Jimei)人力資源・社会保障局」のために雇用状況調査を行った。

 陳氏は中国新聞社(CNS)の取材に対し「製造業や農業・農村関連産業、例えば農産物加工、花卉(かき)栽培、医薬品、保健養生などの上下流の産業チェーンは、すべて大学卒業生向けの非常に大きな需要が存在する」と強調した。

「学而優則仕」(学問に励み優秀な人材となり、官職に就くべき)などの伝統的な就職観の影響で、これらの業界は大学卒業生を募集するのが難しい状況にある。しかし、これらの業界の幹部候補生や幹部の待遇は非常に良いというのも事実だ。

 李副総裁も上述の業種について「今年春節明けの最初の週の時点で、加工製造業の求人数は前年同期比12.4パーセント増加し、これに対し応募者数は前年同期比41.9パーセントも増加した。応募者数の増加率が求人増加率を大きく上回った。ところが、2週目になっても求人数は依然として10.6パーセントも増加していた。これは、応募者数が多い一方で、条件を満たす人材が少なく、実際の就職成立件数があまり多くないことを示唆している。この業界は依然として適応できる人材が不足している状態だ」と分析する。

 また、中国の高齢化が進むにつれて、介護業界も人材不足に直面している。老齢化に関する研究機関「盤古智庫老齢社会研究院(Pangoal Institution Ageing Society Studies Center)」の馬旗戟(Ma Qiji)院長は、求職者に対して「介護業界は近年ようやく注目され始めた分野で、まだ大きな市場空間があり、大学卒業生が必要とされている」と強調している。これまでの介護、医療サービス業務のほか、文化観光、教育、老齢者向け公益人材、家庭用品、智能用品の開発など、新しい分野にすそ野が広がっているという。

 また馬氏は「介護業界の人材不足が深刻である一方で、現状の職業発展の道筋がまだ十分に整備されておらず、給与水準も比較的低い」と指摘する。「介護市場は高収益市場ではなく、短期間に爆発的に成長する市場ではない。将来的に、大学側で介護業界関連の人材を育成する必要があり、業界側も整備された人材流通メカニズムと優れた職業発展の道筋を構築する必要がある」と強調している。

■専門家は「先就職、再選職」(まず就職し、その後に職業を再選択)を推奨

 デジタル経済の発展は、より多くのフレックスタイム制の仕事を生み出している。李副総裁が見るところ、企業は現在、人材の多様性と柔軟性を重視しており、多元的な雇用関係の下では、将来的には兼業やフレックスタイム制がますます増えていくと予想する。政府もフレックスタイム制の整備を続けており、養老保険でもフレックスタイム制の労働者の社会保障を充実させているという。

 新興産業が急速に発展し、企業がますますフレックスタイム制の労働者を採用する傾向にある中、李洪堅講師は「大学卒業生は『先就職、再選職』という考え方を持ち、「幹中学」(仕事をしつつ知識経験を積み重ねる)で業務能力を向上させ、自身の知識と技能を常に更新し、『産業構造転換・高度化過程』での失業リスクを低減すべきだ」とアドバイスする。

 陳暁霞コンサルタントは「大学卒業生は競争が激しい職種に無理にこだわるべきではなく、必ずしも公務員試験や国家試験というお決まりの『丸木橋』を渡る必要はない」と指摘する。「大学卒業生は『自分の内なる声』に耳を傾け、オープンな心でさまざまな業種を受け入れ、自身の知識構成と好みを考えて自分に合った仕事を選ぶべきだ」と提案している。(c)東方新報/AFPBB News