【3月15日 AFP】トルコで男が野良猫を蹴り殺す場面を捉えた動画が拡散され、禁錮刑を言い渡された男が早期釈放された。これを受け、抗議デモや署名運動、殺害予告などが起きる騒ぎとなり、大統領が介入し、再審理が行われる事態になった。

 イブラヒム・Kとだけ氏名が公表されている被告は1月1日、イスタンブールの自宅がある集合住宅のロビーで野良猫を蹴り殺す場面を防犯カメラに捉えられた。近隣の住民は、猫を「エロス」と名付け、普段から餌を与えていた。

 被告は2月上旬、禁錮1年6月を言い渡されたが、素行優良として釈放された。これに対し、動物愛護団体や一部の国民から怒りの声が上がった。

 トルコは野良猫が多く、餌付けや保護も盛んに行われている。

 より厳しい判決を求めるオンライン署名運動が行われ、約32万筆の署名が集まった。署名は2月下旬、司法省に提出された。

 また、レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は夜間に同省に電話をかけ、この事件に「個人的な」関心を寄せていると伝えた。

 これを受け司法省は再審を決定。13日の公判には数百人の傍聴希望者が裁判所の廊下に押し寄せ、張り詰めた空気が漂った。

 再審で刑期は1年長くなったが、動物愛護団体の要求や被告に殺害予告が送られるほどの世論は無視され、実刑判決とはならなかった。ある動物愛護団体は、法律上で認められている上限の4年間服役させるべきだと請願する意向だ。

 トルコのX(旧ツイッター)では、「エロスに正義を(#ErosicinAdalet)」というハッシュタグがトレンド入り。主要紙は、被告に殺された猫の写真を一面に掲載。日刊紙ヒュリエト(Hurriyet)は、「猫殺しのイブラヒム」とエロスに関する記事を何本も掲載している。

 エロスに正義を求める運動には、イスタンブールの強豪サッカークラブ、ガラタサライ(Galatasaray)のアルゼンチン人ストライカー、マウロ・イカルディ(Mauro Icardi)ら著名人も参加している。(c)AFP