【3月28日 AFP】一人また一人と、ドレスをまとったアフリカ系やバイレイシャルの少女が、映画『バービー(Barbie)』と『ワンダーウーマン(Wonder Woman)』のサウンドトラックに乗せ、米ニューヨークのセントラルパーク(Central Park)にあるリンクへ出ていく。行われているのは「フィギュアスケーティング・イン・ハーレム(FSH)」が主催する年に一度の発表会だ。

 黄色の衣装を着た6人が、氷の上を軽やかに回り、バレエを思わせる息の合った演技を披露する。毎年、発表会に出演する300人の少女の大半は、ニューヨークでもとりわけ貧しいハーレム(Harlem)かブロンクス(Bronx)地区で暮らしている。人口850万のニューヨーク市は、米国経済のエンジンとされる一方、不平等によって分断されている。

 FSHは、人口密度の高い多文化なマンハッタン北部で1990年代に設立された非営利団体だ。創設者のシャロン・コーエン氏は、当時のフィギュアスケートは「黒人や褐色の女の子がそれほど多く参加するスポーツではなかった」と振り返る。

 それでも、現在プログラムに参加しているナディア・ニールさん(17)にとって、FSHは「人生のすべて」だ。6歳でFSHに入ったニールさんは「ハーレムでフィギュアを始める前のことは思い出せない」と語る。

 同じく参加メンバーのアシュリー・プレンティスさんも「少しずつ学び、進化し、成長してきた。本当に美しい経験で、羽化したチョウのような気分だった」と話す。「滑っているといつも、力強さと自由を感じる」と言い、FSHで家族と仲間が見つかったと表現する。