【3月10日 AFP】インドで最も愛されている料理の一つ、バターチキンをめぐり、二つの店がそれぞれ自社のオリジナルだと主張し、法廷で争う事態になっている。

 首都ニューデリーの老舗店「モティマハル(Moti Mahal)」は、ライバルの「ダリヤガンジ(Daryaganj)」を相手取り、デリー高等裁判所に訴訟を起こした。

 創業者一族同士の確執は、100年前までさかのぼる。

 訴状によると、モティマハルは創業者が最初にバターチキンのレシピを考案したのは、余った鶏肉の水分を保つために、トマトベースの濃厚なグレービーソースを加えたのがきっかけだと主張。ダリヤガンジに対し2000万ルピー(約3600万円)の損害賠償と、ダリヤガンジ一族がバターチキンのレシピを発明したと主張することを禁止するよう求めている。

 モティマハルのオーナーのモニシュ・グジュラール氏(57)は、自分の祖父がバターチキンの考案者であることを示す証拠書類を提出したと述べた。

「他店でバターチキンを提供するなと主張しているのではない。でも、この料理を発明したとは言わないでほしい。私たちの遺産を奪うようなことは許されない」とAFPに語った。

 同氏によれば祖父のクンダン・ラル・グジュラール氏は、1920年にレストランを開店。「乾きかけたタンドリーチキン」にクリーム状のソースを加えるなど、さまざまなレシピを試していた。

 1947年にニューデリーに進出したモティマハルは名店となり、ジャワハルラール・ネルー(Jawaharlal Nehru)元首相や独立運動家のマウラナ・アザド(Maulana Azad)などが常連となった。米国のリチャード・ニクソン(Richard Nixon)元大統領やジャッキー・ケネディ(Jackie Kennedy)元大統領夫人も訪れたという。

 だが、クンダン・ラル・グジュラール氏がビジネスパートナーに指名したいとこ、クンダン・ラル・ジャギ氏の相続人が後にライバルチェーンとなるダリヤガンジを創業。1947年にバターチキンを発明したのはジャギ氏だと主張し始めた。

「彼らは店の雰囲気や店づくりまでまねた」とグジュラール氏は非難する。

 インドでは有名な料理の起源をめぐり論争が度々起きている。2018年には人気のケバブの模倣料理「タンデイ・カバビ」に打撃となる判決が下された。

 またオディシャ(Odisha)と西ベンガル(West Bengal)両州はともに、シロップ漬けのチーズボールのデザート、ラスグッラの発祥地だと主張している。

 映像は1~2月撮影。(c)AFP/Abhaya SRIVASTAVA