【3月5日 AFP】仏上下両院は4日、女性が人工妊娠中絶を行う権利を憲法で保障する法案を賛成多数で承認した。世界で初めて、中絶の権利を憲法に明記する国となる。

 ベルサイユ宮殿(Chateau de Versailles)で行われた採決では賛成780、反対72と、憲法改正に必要な5分の3の賛成を大幅に上回った。法案可決を受け、議員はスタンディングオベーションで歓迎した。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は、「フランスの誇り」であり「普遍的なメッセージ」だと述べた。

 議場で可決を呼び掛けたガブリエル・アタル(Gabriel Attal)首相は、「歴史に残る一歩だ」としながら、中絶の権利は「政策決定者に翻弄(ほんろう)され」、今なお世界中で「脅かされて」いると指摘。中絶の権利を認めた判決が連邦最高裁に覆された米国や、憲法裁判所によって中絶がほぼ全面的に禁止となったポーランドなどの事例に言及した。

 フランスでは1975年、シモーヌ・べイユ(Simone Veil)保健相(当時)の提唱で中絶が合法化された。

 仏世論研究所(Ifop)による2022年11月の全国調査では、憲法への中絶の権利明記を支持するとの回答は86%に上った。

 パリ市内のトロカデロ広場(Trocadero Square)では、大型スクリーンで採決の模様を見守っていた大勢の支持者の間から、可決の瞬間に歓声が上がった。

 12歳の娘を連れた46歳の女性は、「私たちの権利は至る所で常に脅かされ、状況は悪くなる一方なので、うれしい。(憲法に明記されることで)この権利は奪われなくなった」とし、「妊娠するのが男性だったら、(フランス革命時の)1792年には、憲法に(中絶の権利が)書き込まれていただろう」と話した。

 エッフェル塔(Eiffel Tower)には「私の体、私の選択」などのスローガンが掲げられた。国連(UN)が定める3月8日の「国際女性デー(International Women's Day)」にも、憲法改正を祝う特別式典が予定されている。(c)AFP/Toni Cerda with Alice Hackman in Paris