【2月25日 AFP】ケニアにある米野菜・果実加工大手デルモンテ(Del Monte)の農園が、警備員による暴行、レイプ、殺人などで訴えられている。

 首都ナイロビ郊外に同社が所有する広大なパイナップル農園の元警備員ダニエル・カマウ・ワイナイナさん(58)は「指示は明確だった。窃盗犯を見たら追いかけて捕まえ、徹底的に殴れと命じられた」と語った。

 デルモンテが直接雇用する警備員に暴力を受けたとする被害者や親族10人とNGO2団体は昨年12月、高等裁判所に同社を訴えた。

 警察は同月、デルモンテの農園からパイナップルを盗もうとしたとされる男性4人が遺体で見つかった事件についても、殺人の疑いで捜査していると発表した。

 AFPはティカ(Thika)近郊の農園で警備員による暴力を目撃した、あるいは自分も被害に遭ったという人々に話を聞いた。

 デルモンテは世界での売上高は40億ドル(約6000億円)を超え、ケニアでは約6000人を雇用する。AFPはこれらの件について数回取材を申し込んでいるが、これまで一切返答はない。

■過激化する窃盗対策

 デルモンテの農園では確かに窃盗が頻発している。AFPの記者も1月に2日ほど目撃した。どちらとも若者たちが、盗んだパイナップルが詰まった袋を徒歩またはオートバイで運んでいた。発生したのは午後1時ごろ、警備員が交代する時間帯だった。

 20代のある男性はAFPに対し、12月に川で遺体で見つかった4人と当日一緒だったと語った。「待ち伏せしていた警備員らに怒鳴られた。追いつかれて、金属や木の棒で殴られた」。

 この男性はなんとか茂みに隠れたが、他の4人はひどく殴られていたという。「その後、みんな死んだと思ったようで、警備員たちは証拠を隠すため遺体を川に捨てた」

 デルモンテは「検視報告書によると死因は水死で、犯罪を示すものはない」としている。しかし独立機関のケニア国家人権委員会(KNCHR)は予備調査の結果として、「4人は水死させられる前に襲撃されていたことが明らか」だと指摘した。

 匿名を条件にAFPの取材に応じたKNCHRの調査官によれば、デルモンテ警備員の暴力は以前よりも「巧妙」になっているという。「以前は殴り殺して、遺体を川に捨てていた。今は殴ってから、まだ息の根があるうちに水に漬け、検視で溺死と判断されるようにしている」

 主に警備員として25年間デルモンテで働いていたワイナイナさんも、パイナップル泥棒を殴ったことがあるとAFPに語った。「上からの命令で殴ることもあった。さもなければクビだと脅された」