■政治の最前線へ

 20代前半で政界入りしたアタル氏は躍進を遂げてきた。

 映画プロデューサーの息子として生まれ、首都パリで育ち、市内中心部にある私立名門校エコール・アルザシエンヌ(Ecole Alsacienne)に通い、卒業後はやはり名門のパリ政治学院(Sciences Po)に進んだ。

 かつては社会党所属議員だったが、2016年にマクロン氏が新たな中道派運動を立ち上げると、これに合流した。

 17年に国民議会(下院)議員に選出された後、政府報道官や公会計担当相を歴任。公会計担当相時代にはメディア通としてノウハウを駆使し、大論争を巻き起こしたマクロン氏の年金改革を支えた。

 昨年7月には、政府内で特に注目度が高く、政治的にデリケートでもある国民教育相に就任。

 同相としてアタル氏は、最優先課題とされるいじめ問題について、元教師であり、問題に個人的にも高い関心を寄せている大統領夫人のブリジット(Brigitte Macron)氏の協力を仰いだ。

 また、就任から2か月足らずで、イスラム教徒の女性が着用する全身を覆う服「アバヤ」の学校での着用を禁止し、特に耳目を集めた。

 フランスの世俗主義をめぐる議論の再燃を招いたアタル氏のこの決定は、保守派の留飲を下げると同時に、知名度を上げるためだったと見る向きも多い。

 同性愛者であることを公表している初の首相となったアタル氏の父親はユダヤ人で、同性愛嫌悪と反ユダヤ主義の両方を経験したと明かしている。またあるインタビューでは「母方を通じて自分はロシア正教徒だ」と述べている。(c)AFP/Anna SMOLCHENKO, Baptiste PACE and Paul AUBRIAT