【12月27日 AFP】 イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム組織ハマス(Hamas)の紛争をめぐり、イスラエルと友好関係を築いてきたロシアの動向が注目されている。ロシアはガザ紛争でイスラエルを非難しており、専門家は中東の地政学の変化によって両国の親密な関係にも終止符が打たれたとみている。

 わずか2年前、両国関係は大きく異なっていた。ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻した際、イスラエルは西側の対ロシア制裁には加わらず、ロシアと便宜的な同盟関係を維持していることを印象付けた。

 現在、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は先頭に立ってイスラエルを批判する一人であり、10月7日のハマスによる越境攻撃を非難していない。

 その代わりに、ロシアはウクライナ紛争を機に、イスラエルの宿敵であるイランとの関係を深めている。

 ロシアは国連(UN)の舞台でガザでの即時停戦を支持しており、ガザ紛争初期の段階ではプーチン氏がイスラエルを非難した。さらに、第2次世界大戦(World War II)でのナチス・ドイツ(Nazi)による現サンクトペテルブルク(St. Petersburg)への残忍な包囲と似通った戦術をイスラエルが検討しているとも非難した。

 ロシアは10月下旬、ハマスとイランの特使を招き、外国人人質解放を含めた協議を行ったと明らかにした。これに対し、イスラエルは「テロリズムを支援する非難すべき行為だ」と反発した。

 12月には、イランのイブラヒム・ライシ(Ebrahim Raisi)大統領がモスクワを訪問してプーチン氏と会談したほか、ロシアはアラブ連盟(Arab League)と共に国連安全保障理事会(UN Security Council)の即時停戦決議を要求した。

 イスラエルでは、ロシアの変節に衝撃を受け、怒りが広がっている。越境攻撃で殺害された約1140人の中にはロシア人も含まれるにもかかわらず、ハマスを非難しないというプーチン氏の決断は「ひどい裏切りだ」と受け止められていると、イスラエル人歴史家のセミオン・ゴールディン(Semion Goldin)氏は指摘する。

 ヘブライ大学(Hebrew University)のロシア学研究員であるゴールディン氏は、ロシアは完全に「われわれの側ではなく襲撃した側に立った」と指弾した。