【12月20日 AFP】フランス南部の山間部にある村の住民は、「ザック」呼ばれていた礼儀正しい少年が、2017年から6年間行方不明となっていた英国の少年だったことをいまだに信じられずにいる。

 ピレネー山脈(Pyrenees)の麓のカンシュルラグリー(Camps-sur-l'Agly)村にある、少年と祖父が滞在していたとされる宿泊所近くに住む男性(79)は、「思いも寄らなかった」と驚きを示した。

「善い人々だった。少年は私たちが車で通り掛かると、よくあいさつをした。おじいさんは、壁の修理をするなど、よく働いていた」と話した。

 英国人のアレックス・バティ(Alex Batty)さん(17)は、11歳だった6年前にスペインで行方不明になり、先週フランスで発見された。

 警察は、親権を持たない母親のメラニーさんと祖父のデービッドさんが、スペイン旅行に行くと言いアレックスさんを連れ出したとみている。

 デービッドさんは半年前に亡くなり、メラニーさんが今度はフィンランドに行くと言い出したため、アレックスさんは逃げ出そうと決意。4日間山中を歩き、13日午前3時、車で通り掛かった配達員に発見・保護された。

 アレックスさんは16日、祖母が住む英国に帰国した。英メディアによると、祖母がアレックスさんの法廷後見人となっている。

■「スピリチュアルな共同体」

 アレックスさんは捜査官に対し、「スピリチュアルな共同体」の一員として、スペインおよびモロッコで過ごした後、フランスに渡ったと明かしている。

 人口数十人のカンシュルラグリーで宿泊所を営む男性らの話では、アレックスさんが初めて滞在したのは2021年の後半だった。

 宿泊所近くに住む女性(61)は、同年10月にメラニーさんに会い、メラニーさんと祖父は陰謀論者だと感じたと語っている。新型コロナウイルスに感染したと話した際には、メラニーさんはそんな感染症は存在しないと指摘したという。

 女性はメラニーさんについて、「スピリチュアルな共同体」を求めていたものの、既存の共同体に属するというよりは、メラニーさん自身が共同体を率いようとしていたとみている。

 一方でアレックスさんについては、「とても良い少年で、親しみやすく親切、礼儀正しくて健康的だった」と形容し、「その裏に奇妙な物語があるなど、知りようもなかった」と語った。(c)AFP