【12月18日 AFP】世界保健機関(WHO)は17日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)最大のシファ(Al-Shifa)病院の救急外来部門は「血の海」のような状態で、病院自体の「蘇生が必要」との認識を示した。

 WHOなど国連(UN)機関のチームは16日、ガザ北部の同病院に医療品を届けることに成功した。

 WHOは「チームによれば、救急外来は『血の海』と化しており、数百人の負傷者を抱えている上に新たな患者が続々到着している」「外傷患者は床で縫合処置を受け、麻酔は受けられない状態だ」と報告。

 少人数のスタッフが最低限の対応をしているのみで、手術が必要な重体患者はアハリ・アラブ(Ahli Arab)病院に移送されている。人工透析は1日30人までしか受けられないという。

 手術室は酸素と物資が不足しているため機能しておらず、WHOチームは「(病院自体の)蘇生が必要」だと強調している。

 また、「家を追われた多数の住民が病院の建物と敷地を避難所として使用」しており、飲料水と食料が「全く足りていない」という。

 WHOは、基本的な医療サービスの再開に向け、シファ病院に対する支援を「数週間以内に」強化する方針を示した。

「燃料、酸素、医薬品、食料、水を定期的に供給」した上で必要なスタッフを確保できれば、「手術室を最大20室稼働させ、術後治療も行うことができる」としている。

 現在、ガザ北部では、「部分的」にでも機能している病院はアハリ・アラブ病院のみで、シファ病院を含む3か所の施設は最低限の医療対応しかできていない。

 一方、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長はこの日、ガザ北部のカマル・アドワン(Kamal Adwan)病院について「ほぼ破壊」されたとし、攻撃で少なくとも患者8人が死亡したと明らかにした。

 イスラエル軍は同病院を数日間にわたって包囲した後、撤収。イスラム組織ハマス(Hamas)の司令部として使用されていたと主張しているが、ハマス側は否定している。

 テドロス氏はX(旧ツイッター)で、「この数日間でカマル・アドワン病院がほぼ破壊され、機能停止に陥り、少なくとも8人の患者が死亡した事態にショックを受けている」「多くの医療従事者が拘束されたと伝えられており、WHOおよび提携機関は彼らの状況に関する情報を緊急に求めている」と表明した。

 イスラエルは、病院に突入する前に院内にいた大半の人々を退避させるため、交渉を通じて安全な通路を設置したと主張している。

 しかしテドロス氏は、「救急車が病院に近づけず、多数の患者は身の安全のため多大な危険を冒して自力での退避を迫られたのをわれわれは把握している」と指摘。「死亡した患者のうち、9歳の子どもを含む数人は適切な処置を受けられずに亡くなった」とするとともに、「院内に身を寄せているとされる避難民の安否を憂慮している」と述べた。(c)AFP