ライオンとハイエナ救出作戦 戦乱のスーダン
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【3月17日 AFP】スーダンの首都ハルツーム南郊に2021年、ライオンのための小さな保護区をボランティアが開設した。荒れ果てた動物園から移送したライオンだった。だが、わずか2年後、そこは正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の紛争地帯になった。
すぐ隣には正規軍の基地がある。「保護区も攻撃され、インフラが破壊され、動物もけがをした」。スーダン動物保護センター(Sudan Animal Rescue Centre)の創設者オスマン・サリフ氏はAFPに語った。
サリフ氏はここへ来てようやくオーストリアの動物保護団体フォー・ポーズ(Four Paws)の協力を得て、ライオンたちの救出作戦の開始にこぎ着けた。迷路のように入り組んでいる両軍の検問所を通り、ライオン15頭やハイエナと鳥を含む動物計50匹・羽の避難が続いている。
米NGO「武力紛争地域事件データプロジェクト(ACLED)」によると、昨年4月に始まった内戦の死者は11月上旬までに1万人以上に達した。また国連(UN)によると、避難民の数は630万人に上っている。
元から脆弱(ぜいじゃく)だったスーダンのインフラは崩壊し、かつてない人道的危機によって動物も苦しめられている。
「7頭のライオンを失ったが、流れ弾で死んだ1頭以外は病死だ」とサリフ氏は語った。必要な治療を提供することができなかったからだ。
ライオンは毎日5~10キロの肉を餌とするが、動物園からここへ保護されたライオンは栄養失調に陥っていた。紛争前はボランティアたちが自腹でその餌代をまかなうこともあった。
しかし紛争が始まり、餌が足りなくなったライオンは、流れ弾で死んだ雌ライオンを共食いするほど飢えている。
フォー・ポーズの獣医師アミール・カリル氏は、これは「異常行動」だと指摘する。ライオンが「肉体的に弱り、心理的にもトラウマを抱えている」証拠だと述べた。
■鎮静剤
ハルツームでは現在、軍とRSFの承認なしで街を出入りすることができない。両軍は同心円状に街を囲み、首都を往来する人々を尋問・拘束し、物資を没収している。
フォー・ポーズはこれまでにも紛争で荒廃したリビア、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)、イラクのモスル(Mosul)などで動物の救助活動を行ってきた。今回の任務は動物たちをスーダン東部へ避難させることだ。
肝心なのは「安全対策」、中でも「紛争当事者双方とのコミュニケーション」だとカリル氏はAFPに語った。
鎮静剤を投与された動物は輸送用のケージに入れられ、検問所が点在する道を車で約140キロ走った南部ワドメダニ(Wad Madani)にあるウム・バロナ国立公園(Um Barona National Park)に到着した。
ここで「数日、旅の疲れを癒やしてから」、エチオピア国境にある国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の生物圏保護区、ディンダー国立公園(Dinder National Park)を目指す。
世界自然保護基金(WWF)によると、アフリカ大陸全体のライオンの個体数は1993~2014年の間に43%減少し、野生では推定2万頭しか残っていない。(c)AFP/Sofiane Alsaar