【12月6日 AFP】イランの治安要員が昨年9月以降、全国に広がった抗議デモを弾圧する際に拘束した市民にレイプや性暴力を行っていたとする報告書を国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が6日、公表した。

 イランでは昨年9月、ヒジャブの着用方法をめぐり警察に逮捕されたマフサ・アミニ(Mahsa Amini)さんが死亡したことをきっかけに抗議デモが全土に拡大。当局の激しい弾圧により、人権活動家によれば数百人が死亡、国連(UN)発表では数千人が拘束され、デモは年末までに沈静化した。

 アムネスティは、安全な通信プラットフォームを通じて、遠隔で被害者や目撃者と面談して証言を集めた。

 デモ参加者への性暴力は45件に上り、発生場所は半数以上の州に及んでいる。このためアムネスティは、実際の数はこれを大きく上回る可能性があるとの懸念を示している。

 45件の事例のうち16件はレイプで、被害者の内訳は女性6人、男性7人、14歳の少女1人、16歳と17歳の少年2人だった。うち女性4人と男性2人は、最大10人の男性治安要員に集団レイプされたという。

 性器を殴られた、強制的に裸にされたといったレイプ以外の性暴力を受けた29人の被害についても報告されている。

 性加害を行ったのは、イラン革命防衛隊(IRGC)の隊員や民兵組織「バシジ(Basij)」のメンバー、情報省の職員、警察官だという。

 アニェス・カラマール(Agnes Callamard)事務総長は「私たちの調査で、イランの情報機関や治安当局が、12歳の子どもを含めデモ参加者を拷問・処罰し、心身に永続的なダメージを与えるためにレイプや性暴力を利用していた実態が明らかになった」と指摘した。

 11月24日にイラン当局に調査結果を知らせたが、「今のところ何のコメントも得られていない」という。

 アムネスティによれば、大半の被害者は報復を恐れて訴えを起こしていない。また、検察に訴えても黙殺されているという。

 カラマール氏は、「国内で裁きが下される見通しが立たない中、国際社会には被害を受けた生存者に寄り添い、正義を追求する義務がある」と訴えた。(c)AFP/Stuart WILLIAMS