【1月8日 AFP】さびついたガソリンスタンドの給油機や時代遅れのエナメル製の看板など昔懐かしい品々で埋め尽くされた英国の工房。カール・バージさん(54)は、修復中の赤い電話ボックスに最後の仕上げを施した。

 バージさんは20年以上にわたり、老朽化した電話ボックスの修復を手掛けている。

 英国の象徴とされる赤い電話ボックスは、1920年代に初めて設置された。

 1990年代のピークには国内の設置数は約10万台に達したが、大半は有名な赤色のものではなかった。

 携帯電話の普及により現在はあまり利用されなくなったが、全国でいまも約2万台が現役だ。

 使われなくなった電話ボックスは、地域社会での利用されることが多い。ミニ図書館や案内所、自動体外式除細動器(AED)用のスタンドなどに転用されている。

 ビジネス利用される場合もある。ロンドン中心部ラッセルスクエア(Russell Square)のティラミス販売店「ウォークミス(Walkmisu)」は、電話ボックスを改装している。

 電話ボックス2台を使っており、ティラミスとコーヒーを提供している。

 経営者のダニエル・ベネデッティーニさん(29)は普通の店舗を開くより、電話ボックスを使った方がコストが掛からなかったと話した。

 電話ボックスは個人の所有者から借りている。ウォークミスが初めての店だったが、近くにカフェも開いた。

 内部は改装されており、棚や冷蔵庫、コーヒーメーカーが設置されている。だが、外側は窓に張られたポスター以外はすべて、数十年前のたたずまいのままだ。

 バージさんによると、電話ボックスの修復には平均6週間かかる。はじめに「骨組み部分」まで解体するという「緻密な」作業から始まる。

 鋳鉄製の骨組みから内部と外部の部品を取り外し、砂吹き機を使って塗料やさび、不純物などをきれいにする。

 次にボディーフィラーを塗り、磨いて全体を整える。すべて手作業のため、完成には数日を要する。

 最後に電話ボックスを「郵便局の赤」と呼ばれる色に塗り、合わせガラスを入れ、ドアには硬材でできた新しい外枠をはめる。

■夢中になれるもの

 20年間自動車販売業で働いていたバージさんは、英国の古い物を集めるのが趣味だった。今ではその情熱を自ら立ち上げた工房「リメンバー・ホウェン・UK(Remember When UK)」に注いでいる。

 現在は同時に数台の電話ボックスを並行で修復している。

 工房を立ち上げてから20年。今でもこの仕事への情熱は失っていない。

「少し年を取り、あらゆることに少し時間がかかるように感じる。でも、注いでいる情熱は22年前と変わらない」とバージさん。「むしろ前よりも夢中かもしれない」

 映像は2023年8~10月に撮影。(c)AFP/Mathilde BELLENGER/Anastasia CLARK