【11月24日 東方新報】中国・上海市は11月20日、2025年までに商業ロケット50機、商業衛星600機の年間生産能力を持つ商業ロケット生産の完全な産業チェーンを育成する計画を発表した。

 計画によると、衛星通信、ナビゲーション、リモートセンシング技術の統合的な発展を強化するため、衛星製造、打ち上げ、地上システム設備、空間情報アプリケーション、サービスに重点を置くとしている。

 新世代の中型・大型貨物ロケット、低コスト高集積衛星、インテリジェントアプリケーション端末という三つの主要製品の開発を中心に、ロケットや衛星から地上局や端末にいたるまで全てを網羅する産業サプライチェーンの構築を目指している。

 呉清(Wu Qing)副市長は今年4月、「上海市はすでに比較的完全な空間情報産業システムを構築し、研究開発、製造、応用などの主要分野で統合的で革新的な発展パターンを形成している」と語っている。

 上海市が宇宙産業の充実を図るのは、都市全体のコントロール、交通、海運、安全、エネルギー、金融などの分野において宇宙技術とデータの利用が必要だと考えるためだ。

 このため上海市は、優秀な人材の育成や有力企業の誘致のための支援政策や研究所、機関、研究センターなど革新的なプラットフォームの拡充を進めている。

 同計画の試算によると、上海の空間情報産業は25年までに2000億元(約4兆1680億円)を超えると見込む。

 上海市のみならず中国全体の宇宙産業の分野において昨年は、記録的な64回のロケット打ち上げ成功や世界最大級で最も洗練された軌道インフラストラクチャーである宇宙ステーション「天宮(Tiangong)」の完成など、目覚ましい成果を収めている。

 民間宇宙インフラの健全で急速な発展を推し進めるための「中国民間宇宙インフラストラクチャー中長期発展計画(2015-25)」が15年に発表されて以降、中国の宇宙産業分野への民間企業の参入が着々と進んでいる。

 昨年7月には中国初の商業ミッション専用宇宙発射場の建設が、海南省(Hainan)文昌市(Wenchang)で始まった。

 今年もまた中国の民間宇宙産業は、衛星やロケットの分野で多くの民間企業が打ち上げを成功させるなど、発展のペースを加速している。

 今年1月には、ロケット開発の新興企業「Galactic Energy」が5基の衛星を軌道に打ち上げた。4月には、「天龍(Tianlong)2号Y1型液体輸送ロケット」が「酒泉衛星発射センター」から打ち上げられ、中国初の軌道液体燃料の輸送ロケットとなった。

 さらに7月、北京に本社を置く「藍箭航天(LandSpace)」が独自に開発したメタン-液体酸素を燃料とする「朱雀(Zhuque)2号Y2型貨物ロケット」が同じく酒泉から打ち上げられた。また同月、「銀河航天(Galaxy Space)」が中国初のフレキシブル・ソーラー・アレイを搭載したフラットパネル通信衛星も打ち上げに成功した。

 上海市は昨年9月、「商業衛星ネットワークの構築など新たなインフラ建設を加速させる計画」を発表し、続けて11月には「空間情報産業の発展促進に関するガイドライン(2022-2025)」を発表している。

 上海市が、中国全体の宇宙産業発展の要衝の都市として、宇宙関連産業のサプライチェーンの拡充を着実に進行させている様子が見て取れる。(c)東方新報/AFPBB News