【11月17日 東方新報】有人宇宙船「神舟17号(Shenzhou-17)」が10月26日、無事に宇宙ステーション「天宮(Tiangong)」とのドッキングに成功した。午後7時34分、「天宮」のドアが開き、常駐するクルーが迎え入れられた。

「神舟17号」のクルーは宇宙船「天宮」でさまざまな科学実験や技術試験を行う他、貨物船「天舟7号(Tianzhou-7)」の受け入れや、最終的には「神舟18号」のクルーとの引継ぎを行い、来年4月頃に帰還する予定だ。

 中国初の有人飛行船の成功からすでに20年、「神舟5号」から「神舟17号」まで、中国は絶えず宇宙飛行への道を歩み続け、宇宙経済と宇宙産業の加速的なグレードアップを進めてきた。業界の初歩的な統計によると、2022年までに中国国内で登記され通常に経営されている企業は400社を超え、中国の宇宙産業が波及効果を生む産業チェーンの規模は1兆元(約20兆8666億円)を超えている。

「『天宮』は情報、エネルギー、動力技術や運航コスト効率の面で、国際宇宙ステーションの水準を超えていると期待できる。『天宮』が軌道上を飛行する段階で、その施設の開放と投資勧誘、商業化応用活動の展開、宇宙旅行などの宇宙経済の発展を推し進めることになるだろう」、中国有人飛行プロジェクトの周建平(Zhou Jianping)総工程師は18年の時点で、すでにこのように述べていた。

 注目すべきは、22年の「ニューヨークタイムズ(New York Times)」の記事に、「天宮」プロジェクトの総建設コストは80億米ドル(約1兆2095億円)を超えていないと書かれており、英国の「ロイター通信(Reuter)の17年の報道では、国際宇宙ステーションの総費用は1000億米ドル(約15兆1190億円)と紹介されていることだ。

 ちなみに、米国航空宇宙局(NASA)の宇宙ステーション計画に関わる年間の支出は30億米ドル(約4536億円)に達している。

 コストが比較的小さいことは、宇宙の商業化にとって大きな発展空間を生み出すことになる。産業チェーンの観点から見て、中国の商業化された宇宙産業は、上流に属すロケット発射、衛星と地上設備、中流に属す衛星の運航・運営、下流に属す各種の応用技術が包括されている。

 伝統的な応用技術には、通信、ナビゲーション、リモートセンシングが含まれ、新しい応用技術分野には、衛星インターネット、宇宙旅行、資源採掘、深い領域の宇宙探査などが含まれる。

「中国宇宙工業品質協会」の統計データによれば、中国の商業化された宇宙市場の規模は15年の3764億元(約7兆8413億円)から20年の1兆202億元(約21兆2532億円)まで拡大し、年間総合成長率は22.09パーセント、また21年には1兆2447億元(約25兆9300億円)に達している。

 世界の科学技術産業分野の研究諮問機関の「泰伯智庫(Taibo Intelligence Unit)」は、世界の商業化された宇宙市場は23年から28年の間にその黄金期に突入し、25年の時点では中国市場だけで2兆8000億元(約58兆3307億円)の規模になると予測する。

 宇宙事業が産業チェーンに与える影響力も非常に大きい。「宇宙技術は『技術の金鉱』と呼ばれている。1米ドル(約150.22円)投入すれば7~12米ドル(約1058-1814円)の見返りがある。宇宙産業のテクノロジーけん引力と経済成長に与える威力はわれわれの想像を遥かに超える。例えば、人工衛星を1基打ち上げた時に、その価値は衛星の研究と発射に関わる技術サービス、運航・運用サービス、地上でのサポートなど、これら一連の総合的な技術的価値は、非常に大きい」、中国航天科技集団(CASC)の馬興瑞(Ma Xingrui)元総経理は、早くも13年の時点でこのように話している。

 人工衛星だけに限っても、それに関わる産業チェーンを絶えず延伸し続けている。

 銀河航天(北京)科技(Galaxyspace)の張世傑(Zhang Shijie)主席サイエンティストは「世界の宇宙技術の明確なトレンドは、軍事分野から民間消費分野への拡張である。宇宙技術は従来の情報収集と伝達の方法を変化させ続けている。従来の衛星テレビや衛星ナビゲーションなどの民間利用と同様に、衛星リモートセンシングや衛星通信も徐々に大衆の生活に浸透していくだろう」と語る。

 注目すべきは、中国の衛星通信業界の市場規模は、年率8.4パーセントの複合成長率で拡大し、24年には3447億元(約7兆1783億円)に達すると予想されていることだ。さらに、衛星インターネットをはじめとする空間情報サービスは今後かなり長い期間、宇宙経済の主力事業になると見られている。宇宙経済に関わる新興の業種分野は巨大な産業エネルギーを噴出させ、新たな企業を生み、新しい宇宙産業を派生させると予想されている。

 ただし、宇宙事業の経済へのテコ入れパワーは顕著ではあるが、一方でそれを高い次元の産業に「昇華」させる上での難点やボトルネックには、他の産業分野と同様に、やはり注意を払う必要がある。

 取材に応じた航空宇宙業界の某企業は、「民間の宇宙事業はまだ初期段階。わが社を例にすれば、今はまず技術的な面で『ゼロからイチ』を達成したところ。これから商業ベースでの『ゼロからイチ』を目指すことになる」と語った。

 しかし、産業チェーンを構成する企業群はそれぞれの模索を続けている。

 湖南華菱線纜(HunanValin Wire&Cable)の熊碩(Xiong Shuo)はメディアのインタビューで、「航空宇宙分野の製品は、その製造プロセス、材料、また製品の納入に至るまで極度に高い要求を満たす必要があり、産業にとっての訓練効果が非常に大きい。その過程で企業の技術的蓄積、製品の蓄積が形成される。航空宇宙分野で蓄積した応用ノウハウの民間産業領域への技術転換を、私たちは一歩一歩推し進めていく」と語っている。(c)東方新報/AFPBB News