【11月10日 東方新報】中国では内陸の山西省(Shanxi)や陝西省(Shaanxi)が石炭の産地で、特に山西省は世界の石炭消費の半分を占め、すでに地表の8分の1が掘られているほどだ。その炭鉱で「スマート無人化」が急速に進んでいる。

 地上から数百メートル地下の採掘現場に5Gの通信設備が張り巡らされ、人工知能(AI)を搭載した機械やロボットが自動的に作業を行う。大型カッターがトンネルの採掘を進め、インテリジェントカメラが石炭の種類や不要な廃石を選別。アームロボットが分別作業を行い、ベルトコンベヤーで搬送していく。

 坑内の映像はAIが一つにまとめ、地上のコントロールセンターへ。以前はオペレーター室で作業員が坑内作業を遠隔操作していたが、今は事前にプログラムを設定してボタンを押すだけ。坑内に異変があればAI監視カメラや故障診断システムがすぐ探知するので、作業員がモニター画面をずっと見続ける必要もない。炭鉱開発企業の担当者は「採掘現場から人がいなくなり、作業員は7割削減した一方、生産効率は16パーセントアップした」と説明する。

 中国では太陽光や風力などのクリーンエネルギーの増設に力を入れているが、今もエネルギーの主力は石炭だ。中国国家発展改革委員会によると、2022年のエネルギー消費のうち石炭消費は56.2パーセント。石炭の安定供給は国のエネルギー政策にとって重要だが、中国では急速な少子化が進み、さらに高学歴化により現場労働を嫌がる若者が増えている。このため、炭鉱のスマート化は必須の課題といえる。

 中国政府は2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を減少に転じ(カーボンピークアウト)させ、2060年には排出量を差し引きゼロ(カーボンニュートラル)にする「双炭(ダブルカーボン)」の目標を掲げている。採掘の無人化や効率化はCO2の排出削減につながり、国策と合致する。

 国家鉱山安全監察局によると、スマート化した作業場所のある炭鉱は730か所、スマート化した採掘場は1400か所に達する。

 ただ、スマート化が進んでいない炭鉱では事故が後を絶たない。陝西省延安市(Yan'an)では8月21日に炭鉱内でガス爆発事故が発生し、作業員11人が死亡。山西省では8月だけで炭鉱の死亡事故が12件発生し、計15人が亡くなった。正しい作業手順の不履行や安全対策不足、違法操業などが指摘されている。

 政府は2035年までに国内の炭鉱すべてをスマート化する計画を示している。さらなる悲劇を防ぐためにも、炭鉱の無人化が求められている。(c)東方新報/AFPBB News