【11月22日 東方新報】中国で最も人気のあるスポーツはバスケットボールだろう。競技人口は約7610万人(2021年)。テレビのある飲食店に入ると、たいてい中国バスケットボール協会(CBA)の試合が放映されており、大半の公園にはゴールポストが設置されている。米国のプロバスケットボール(NBA)のヒューストン・ロケッツ(Houston Rockets)で活躍した姚明(Yao Ming)選手は国民的スターで、現在は中国バスケットボール協会の会長を務める。

 その国民的なスポーツであるバスケをテーマにした「第1回国際バスケットボール博覧会2023」が11月8日、福建省(Fujian)の晋江国際会議展覧センターで開幕した。中国バスケットボール協会や地元政府が発起し、トーナメント戦やシンポジウムなどが繰り広げられた。

 姚明会長は「この博覧会を通じて、バスケットボールの楽しさを皆で分かち合っていきたい」とあいさつした。一連のイベントには、プロリーグで活躍するスター選手たちに混じって、中国独自の草の根リーグ「村BA」関係者も参加し、注目された。

「村BA」とは、中国内陸部の貴州省(Guizhou)台盤村から始まったとされる。2022年3月27日に開催された地域のアマチュアバスケ大会がインターネットで中継され、その熱戦ぶりが話題になり、NBAやCBAをもじって「村BA」と呼ばれるようになったのである。

 中国メディアによると、台盤村は人口1187人で、少数民族のミャオ族が92パーセントを占める寒村だ。数十年前から村の行事に合わせて、若者たちバスケットボールの親善試合をしていたといわれるが、2022年のネット中継をきっかけに村はバスケットボールの「聖地」になっていく。

 中国のSNS上には「純粋な情熱がぶつかり合う村BAのゲームは、八百長疑惑が繰り返されるプロリーグの何倍も面白い」などと、プロリーグの腐敗にからめた絶賛のコメントがあふれている。

 村おこしにもつながった。生で試合をみたいと、バスケットボール愛好家たちが貴州省の中心都市である貴陽市などから車で3時間以上かけて、台盤村に詰めかけた。元NBA選手で現在はCBAでコーチをするステフォン・マーブリー(Stephon Marbury)氏やNBAのスター選手ジミー・バトラー(Jimmy Butler)選手も村にやってきた。

 仕事の合間に幼なじみとバスケットボールをしていた村のアマチュア選手たちは、にわかに村BAのスタープレーヤーにまつりあげられ、ファンたちからサインを求められる存在になったのである。

 福建省で開催された国際バスケットボール博覧会でも、プロリーグとほぼ同じスペースを使って農村バスケットボールの展示エリアが設けられた。村BAチームを集めて、全国大会を実施しようとの動きもあるという。台盤村から始まった村BAは中国各地に広がっている。村BAから世界的なスター選手が生まれる日も近そうだ。(c)東方新報/AFPBB News