【11月21日 AFP】アルゼンチンで19日に行われた大統領選の決選投票で当選したハビエル・ミレイ(Javier Milei)氏(53)にとって、勝利の余韻に浸っている余裕はなさそうだ。同国経済は高インフレに見舞われ、資金は不足。債権者や国際社会にもそっぽを向かれている。次期大統領が直面する課題を探ってみた。

 米シンクタンク、ウッドロー・ウィルソン国際学術センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)のアルゼンチン専門家、ベンジャミン・ゲダン(Benjamin Gedan)氏は「アルゼンチン大統領になるということは、世界中の政治分野で最悪の職の一つに就くということだ」と語った。

「問題の根は非常に深く、複雑に絡み合っており、識別は簡単でも解きほぐすのは容易ではない」

 ミレイ氏は、数十年にわたる経済失政に対する怒りを追い風にトップの座に上り詰めた。通貨ペソを廃止して経済の「ドル化」を進め、中央銀行は閉鎖、歳出を削減すると主張している。

「アルゼンチンの衰退を終わらせる」と公約。「漸進主義」や「妥協策」にかかずらっている暇はないと警告した。

 大統領就任は12月10日。専門家は、インフレ率が143%、貧困率が40%超に達する中、政策運営は困難を極めると予想している。

■ドル化の行方は

 ミレイ氏は、「インフレのがん」を撲滅するため、2025年までに経済をドル化する構想を提案している。それは、通貨ペソを放棄し、金利調節など金融政策権限を手放すことを意味する。

 ドル化に向けては大量のドルを確保しておく必要がある。しかし、国際通貨基金(IMF)は、アルゼンチンのドル準備高は危険なほど低水準に落ち込んでいると警告している。

 同国のトルクアト・ディ・テジャ大学(Torcuato Di Tella University)のカルロス・ヘルバソニ(Carlos Gervasoni)氏は、中道右派の協力をあおぐにしても、政界新参者のミレイ氏の「政局運営能力は極めて限定的」だと指摘する。

「例えば通貨を変更したり、中央銀行を閉鎖したりするための法案を成立させるのは不可能だ」