【11月10日 東方新報】中国・北京の故宮博物院(The Palace Museum)で10月30日、歴史的な彫刻・木版を集めた「彫刻館」がオープンした。明朝から清朝までの彫刻を1万5000点以上保管。オープニングセレモニーとして、清朝の代表的な木版を展示した「吉光片羽―故宮博物院蔵清代宮廷彫版文物展」を開催している。このテーマの展覧会は故宮博物院では初となる。

 紫禁城とも呼ばれる故宮(Forbidden City)は明・清朝の宮殿で、現在は歴史的文化財を保管する博物院として中国を代表する観光地にもなっている。博物院では明・清朝の約21万点の公式木版を保管。ナシやナツメの木を使った木版は漢語、満州語、モンゴル語、チベット語の4種類があり、それぞれ格式ある書体で文字が刻まれている。少数民族・女真族によって建国された清朝が広大な領土を支配し、多民族の統治を図った軌跡がうかがえる。彫刻館ではその中でもえりすぐりの文化財1万5000点を保管する。

 展覧会のタイトル「吉光片羽」の意味は、「吉光」が伝説の神獣、「片羽」はその毛皮のひと切れを指す。「残存する貴重な文化財」の例えであり、まさに展示物にふさわしいタイトルだ。

 会場では清朝の木版32点を展示。特に注目を集めるのが、順治5年の「摂政王令旨」だ。清軍が北京に入城した際に、摂政のドルゴンが布告したもので、「それぞれ王や大臣は中原(中心地)に進出するにあたり、自らの責務を全うすること。一時の利益を得るため法をねじ曲げてはならず、法に違反した者は厳しく処罰する」と記している。紀元前の漢王朝の創始者・劉邦(Liu Bang)が秦の首都・咸陽に入城した際の「法三章」をほうふつとさせる。

 展覧会では「摂政王令旨」のほか、精緻な山水版画の傑作といわれる康熙52年の「避暑山庄三十六景詩」や、故宮博物院で最大の木版となる長さ1.2メートルの「五屏風全図」などが展示されている。故宮では乾隆5年の火災で多くの木版が失われており、それ以前の公式木版は非常に貴重だ。

 明・清の時代は木版技術が隆盛を極め、広く普及した時期。現代に残った「神獣のひと切れの毛皮」が、無言で歴史の重みを伝えている。(c)東方新報/AFPBB News