【10月3日 AFP】性感染症(STD)のクラミジア感染症と淋菌(りんきん)感染症(淋病)、梅毒の感染者急増を受け、米疾病対策センター(CDC)は2日、ばく露後予防(PEP)として一般的な抗生物質を性行為後の内服薬として処方するよう医師に推奨することを提案した。一方、抗生物質の使用拡大によって薬が効かない耐性菌の増加を懸念する声もある。

 コンドームなしで性行為をした同性愛者・両性愛者の男性やトランスジェンダー女性を対象とする臨床試験では、ばく露後予防としてドキシサイクリンを服用する「ドキシPEP」という用法によって各感染症の発症リスクが低減することが分かった。

 広範囲に推奨すると耐性菌が増加する恐れがあることから、CDCのガイドライン案は、こうした高リスク群のみを対象とし、性行為後72時間以内にドキシサイクリン200ミリグラムを1錠、経口投与するよう推奨している。

 米国のクラミジア、淋病、梅毒の感染者は約10年間右肩上がりで、2021年にはさらに感染が拡大し250万人に達した。

 こうした背景には、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染リスクを大幅に低減する薬を毎日服用するばく露前予防(PrEP)の用法が誕生して以来、コンドームの使用率が減少していることが挙げられる。

 他の要因として考えられるのが、ばく露前予防薬を服用している場合は3か月ごとに健康診断を受けるよう推奨されているため、感染判明数が増加していることだ。

 さらに疫学上、感染者数が増えれば増えるほど感染が拡大しやすくなる。

 ドキシサイクリンのばく露後予防の臨床試験では、4回のうち3回で有効性が認められた。

 米国の臨床試験を主導した一人、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の医師で研究者のアニー・ルークマイヤー(Annie Luetkemeyer)氏は、サンフランシスコとシアトル(Seattle)で同性愛者・両性愛者の男性とトランスジェンダー女性を約500人募集して臨床試験を実施。

「3か月ごとの確認で性感染症が約3分の2減少していた」とAFPに説明した。

 ドキシサイクリンの有効性はクラミジアと梅毒で非常に高く、いずれも約80%減少。淋病は約55%減少した。副作用はほとんどみられなかった。

 ドキシサイクリンの服用が増えることで、特に突然変異が起こりやすい淋病で既存の抗生物質への耐性が生じることが懸念されている。しかし、初期段階の研究では懸念材料はないとされる。(c)AFP/Issam AHMED