【9月28日 AFP】英スコットランドの最大都市グラスゴーは27日、違法薬物を摂取するための公的施設の開設を承認した。英国でこうした施設が設置されるのは初となる。薬物中毒者の健康被害の軽減を目的としている。

 設置費用は230万ポンド(約4億1700万円)。薬物使用者は清潔な環境で、医療関係者の観察の下、持参した薬物を摂取することができる。

 英議会とスコットランド議会は数年にわたり、薬物摂取部屋について政治・法的議論を重ねてきた。グラスゴー市の社会福祉委員会は27日、設置を承認した。

 同委は、こうした施設が麻薬中毒者の「健康、福祉、回復」を改善するという「圧倒的な国際的エビデンス」があるとしている。また、路上での薬物摂取は地元コミュニティーや商店に損害を与えており、摂取施設を設けることでこれを軽減できると説明した。

 活動家らは、部屋の利用者を処罰することはないという確約を、スコットランドの法務トップ、ドロシー・ベイン(Dorothy Bain)法務総裁に求めていた。

 ベイン氏は今月、施設利用者を罰することは「公共の利益」にはならないと議会で述べ、承認への道を開いた。

■使用済みの注射器への対処も

 こうした施設の導入が最初に提唱されたのは、グラスゴーでHIV(エイズウイルス)が流行した2016年だった。

 HIVは薬物使用者が汚染された注射針を使い回すことでも感染が拡大する。流行後に行われた調査では、グラスゴー市中心部で400~500人が定期的に薬物を摂取していることが分かった。

 委員会は「公共の場での注射は病気の感染やその他の薬物関連の害のリスクを高める。また捨てられた注射器や針が市民へのリスクとなる」と説明した。

 先月公開された政府統計によると、スコットランドの昨年の薬物関連死者数は過去5年間で最低となったが、欧州諸国と比べるとその数は依然として多い。

 スコットランドの麻薬・アルコール政策担当大臣、エレナ・ウィッタム(Elena Whitham)氏は「これが特効薬ではないことは理解している。だが、世界中の100以上の施設でのエビデンスから、安全な薬物摂取施設は効果があることが分かっている」と述べた。(c)AFP