■痩せていることは裕福であること

 ボロンテ氏は歴史的に見ると、痩せていることへの執着は工業生産技術が誕生したころにまでさかのぼると指摘する。

 それ以前は、デザイナーが各人に合わせて衣服を仕立てていた。だが、大量生産の時代になると、小さめのパターンが採用され、大きいサイズ用にはそれを拡大して使っていた。

 だが、この方式では一定のサイズまでしか対応ができない。それ以上の大きさになると、脂肪や筋肉量によって体型が複雑に変化するためだ。

 ボロンテ氏は「大きいサイズの衣服を製造・販売するにはコストがかかり、熟練した技術も求められる」と述べた。

 それと同時に、自分の体にお金と時間を使えるという意味から、痩せていることは裕福であることと密接に結びつくようになった。痩身(そうしん)へのあこがれは、広告やファッション産業の慣行により深く根付いていった。

■「ファンタジーの世界」

 2000年代初めから、痩せているサイズゼロのモデルの存在が若い世代の間での摂食障害を助長しているのではないかとの懸念が広がり、改善の取り組みが行われている。

 フランスでは2017年以降、モデルに健康診断書の提出が義務付けられた。2大高級ブランドのLVMHとケリング(Kering)は、ゼロサイズ・モデルの起用を停止する憲章に署名した。

 だが、ブランドごとにサイズは異なるため、監視は難しい。デザイナーも同様に困難に直面している。

 第一線で活躍するファッションデザイナー、ムハンマド・アーシー(Mohammad Ashi)氏は、人権やジェンダーに基づく差別は対処されてきたが、体型に基づくものは対処が難しいと語った。

「避けているわけではないが、業界的な視点で考えると、プラスサイズのデザインは生産できない。私たちは見せたいものを販売していて、顧客についても把握している。単なるビジネスだ」

 ファッションデザイナーのジュリアン・フルニー(Julien Fournie)氏は、妊娠中のモデルを起用している。よく起用するモデルは「他のモデルと比べると、あらゆるパーツが6センチ大きい」という。

 だが、「ファッションはファッションのままだ。ファンタジーの世界だし、それが根本的に変わることは決してない」と話した。(c)AFP/Eric Randolph and Olga Nedbaeva