【9月18日 AFP】人生の大半を刑務所で過ごしてきたという、ロシア人のアレクサンドル・フョードロフさん(46)。直近の服役中に思いがけない機会が訪れた。民間軍事会社ワグネル(Wagner)の戦闘員としてウクライナで戦うチャンスだった。

 フョードロフさんは6か月にわたり、ウクライナ東部バフムート(Bakhmut)の制圧作戦に加わり、地獄のような戦いを生き延びた。そして指揮官の約束通り、勲章を授与され、刑務所から釈放された。

 今、フョードロフさんは「特別軍事作戦帰還兵組合(Union of Veterans of the Special Military Operation)」という団体の支援を受けている。

 ロシア大統領府の方針に従い、前線から帰還した戦闘員に社会的・心理的支援を提供する同団体は、トラウマを抱えた元戦闘員の社会復帰は政府にとって課題であり、大きな改善の余地があるとみている。

■「普通の人になりたい」

 帰還兵組合が手配したフョードロフさんの心理カウンセリングが、先月初めてモスクワ近郊のジュコフスキー(Zhukovsky)で行われ、AFPも同席を許された。

 セラピストのアンナ・コシレバさんが「これからどうしたいですか」と尋ねると、フョードロフさんは「普通の人になりたい」と答えた。

 普段は子どものセラピーに使用されている室内に座るフョードロフさんは頭を丸めており、片手にはクモの巣の入れ墨があった。着用しているのは、ワグネルのどくろのロゴが付いた黒いジャケットだ。

 孤児院で育ったというフョードロフさんは、さまざまな罪で計25年間服役していた。「ロシア人を心から愛して」いるという。

 また先月飛行機事故で死亡したワグネルの創設者、エフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏の大ファンだとも語った。

 自らも有罪判決を受けたことのあるプリゴジン氏は昨年、ロシアのウクライナ侵攻が始まると、受刑者を戦闘員としてワグネルに勧誘するため国内の刑務所を回った。

 フョードロフさんによると、バフムートでの戦闘における所属部隊の任務は、敵陣の背後に潜り込んだ上で、攻撃部隊を呼び込むことだった。

 仮住まいしているというモスクワの質素なホテルの相部屋で、フョードロフさんは二つの勲章の写真を出した。一つはワグネルから、もう一つはウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領から贈られたものだ。

 フョードロフさんは「未来を見ずに今を生きている」と言い、元兵士や元戦闘員が「自分を見失って酒に手を出す」ことのないよう、社会復帰支援は「不可欠」だと思うと語った。