【8月25日 AFP】謎の航空機事故で死亡したとされるロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner)創設者エフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏の支持者らは24日、サンクトペテルブルク(St. Petersburg)にある同社のビル、通称「ワグネル・センター(PMC Wagner Centre)」前に集まり、同氏に哀悼の意を表した。

 ワグネルが6月、ロシア正規軍に対する武装反乱を起こすと、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領はプリゴジン氏を「反逆者」と呼んだが、国民からの人気は根強かった。

 ワグネルのロゴとロシア国旗があしらわれた帽子をかぶって弔問した男性は「父親を亡くしたようだと言えるかもしれない」と話した。「われわれにとってはあの人が全てだった。皆、ゼーニャおじさん(プリゴジン氏の愛称)が言うことをいつも待っていた」

 この男性同様、多くのロシア人がソーシャルメディアに投稿されるプリゴジン氏の歯に衣着せぬ動画や音声メッセージを心待ちにしていた。同氏の罵詈(ばり)雑言に満ちた動画は、政府関係者の厳密に統制された発言とは対照的だった。

 ロシア正規軍に対し強烈で露骨な批判を展開したことで、プリゴジン氏はロシア社会の一部でカルト的存在になった反面、軍高官を敵に回した。

 ワグネル・センター前に集まり、赤いカーネーションを手向けた人々は、プリゴジン氏の武装反乱やプーチン氏が反乱を公に非難したことには触れなかった。また、墜落原因をめぐる臆測も口にしなかった。

■ロシアは「孤児」に

 別の男性(36)は「シャルル・ドゴール(Charles de Gaulle)元仏大統領が死去した際、フランスは孤児になったと言われたのを知っているだろう。私に言えるのは、今夜孤児になったのはロシアかもしれないということだけだ」と語った。

 バイクで訪れた女性(31)も花束をささげ、家族を亡くしたように感じたと話した。「私たちにとって、あの人は友人や兄弟のような存在になっていた。きょうの出来事は兵士らに大きな影響を与えると思う」

 一方で、プリゴジン氏の死が国内の緊張を高める可能性への懸念も広がっている。この女性も「これが社会の対立の火種にならないことを願う」と述べた。

■「必然的な流れ」

 プリゴジン氏を悼む声は、首都モスクワでも聞かれた。ある男性(53)は「この国にとって大きな悲劇だ」と語り、「非常に胸の痛む状況だ。かつてないほどに今必要とされているこの国の英雄たち(ワグネル戦闘員)に同情する」と述べた。

 同市では、墜落原因に関するうわさも出ている。ある女性(21)は「複数の可能性がある。防空システムで撃ち落とされたか、テロ攻撃だったのか。あるいは(プリゴジン氏が)平和に暮らせるよう、死が捏造(ねつぞう)されたのかもしれない」と持論を展開した。

 別の女性(32)は、プリゴジン氏の搭乗機墜落について「自分も含めて誰も驚かなかったと思う」と語り、「この国の一連のニュースを見ていれば、ごく必然的な流れだ」と述べた。(c)AFP