【10月14日 AFP】中国北西部新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)にある刑事施設は、以前は中国政府が設置していた強制収容所の一つだった。取材班が訪れると、セキュリティーゲートの警察官に門前払いされた。

 2017年以降、100万人以上のウイグル人をはじめとするイスラム教徒が、人権侵害が常態化している強制収容施設に入れられたと、研究者や運動家、離散民グループは指摘する。

 しかし、中国政府は、そうした施設は単なる職業訓練所だと主張。入所者は「卒業」して既に安定した雇用とより良い生活を手にしており、施設は数年前に閉鎖されたと説明している。

 こうした強制収容施設について、地域の状況に詳しい専門家は、閉鎖された施設もあるが、一部は改修されて別の用途を持つ施設になっていると指摘する。

 カナダのサイモンフレーザー大学(Simon Fraser University)の助教で新疆ウイグル自治区における収容問題を専攻するダレン・バイラ―(Darren Byler)氏は、「被収容者のうち数十万人は、厳しい監視体制が敷かれた工業団地での労働に従事させられている可能性が高く、それ以外にも名称や使途が改変された施設に収容されている」と述べた。

 7月、AFPの取材班は新疆ウイグル自治区の施設26か所への訪問を敢行した。オーストラリア戦略政策研究所(Australian Strategic Policy InstituteASPI)の研究報告に掲載されていた情報を手掛かりにした。

 施設の多くは人里離れた場所に設置されており、そのうちのいくつかは広大な敷地を有し、周囲は高さ5メートルの壁に囲まれていた。その上には有刺鉄線が張り巡らされ、監視塔も据えられている。一方で、放置されている施設もあった。

 西側諸国政府から一部資金提供を受けているシンクタンクのASPIは、衛星画像や公文書、その他の情報を用いて、ウイグル自治区の強制収容施設を特定した。

 中国政府は、真実ではないとASPIの調査結果を否定している。

 ASPIによると、アルトゥシュ(Artux)周辺には少なくとも8施設ある。そのうちの一つは2017年に建設され、その翌年に増設されている。これがAFP取材班が門前払いされた施設だ。

 取材班は、セキュリティーゲートで警察官に止められた。施設へのアクセス許可を求めると、「ここは刑務所だ。中には絶対に入れない」と拒否された。「写真や動画の撮影も許されない」。丁寧だが毅然(きぜん)とした口調だった。被収容者についての質問に、答えはなかった。

 中国公安部のエンブレムが掲げられたゲートの向こうには、砂漠に延びる道路と、その先にある複数の建物が見えた。