【9月12日 CGTN Japanese】米国で発行される国際学術誌「セル・ステム・セル」は7日、豚体内でヒト由来の中期腎臓の培養に成功したことを紹介する中国の科学研究チームによる論文を掲載しました。人とは異なる動物の体内でヒト由来の機能する臓器が培養されたことが報告されたのは、世界で初めてです。

 中国科学院広州生物医薬および健康研究院の頼良学研究員は同件について、「提供臓器の深刻な不足によって臨床上の臓器移植の広範な応用が制限されている。幹細胞に基づく器官の異種動物の体内での培養は将来、この問題を解決する理想的な道になる可能性がある」と説明しました。

 頼研究員はさらに、「この方法で得られるヒト由来の臓器は、より包括的な細胞タイプやより完全な臓器の構造と機能を有するだけでなく、使用した細胞は患者自身のものなので、異種動物の臓器または別人の臓器の移植で生じる免疫上の拒否反応などの問題を有効に回避することができる」と説明しました。

 これまでは、ヒト由来の細胞を用いた異種動物の体内での臓器培養には技術上の多くの障害があり、豚の体内でヒト臓器を培養する構想は成功していませんでした。今回の研究は、分化の潜在力が高く、強い競争力と抗アポトーシス能力を持つ新たな人工多能性幹細胞(iPS細胞)を利用して、最適化された胚補償技術体系と結び合わせることで、腎臓の欠陥を持つ豚の体内でヒト由来の腎臓の培養を実現したものです。

 中国の科学研究チームは、ヒト由来の細胞を豚の胚に注射し、その胚を代理母豚に移植しました。その過程で使用された豚の胚は遺伝子操作により、腎臓の発育に必要な遺伝子が欠落していたので、移植されたヒト細胞の増殖の余地が出現していました。研究者によると、この成果によって、幹細胞と胚補償技術に基づいて、異なる種の動物体内で機能を有するヒト由来の実質臓器を培養することが可能と初めて証明され、動物を利用して臓器の異種動物体内での培養の実現に向け、重要な第一歩を踏み出したことから、ヒトから提供される臓器の深刻な不足問題の解決にとって重要な意義を持つものとのことです。(c)CGTN Japanese/AFPBB News