【9月8日 AFP】ドイツの高速道路(アウトバーン)は、同国が生んだテクノバンド「クラフトワーク(Kraftwerk)」のアルバム名としても知られている。しかし、延長計画により首都ベルリンの複数のクラブが閉鎖の危機にさらされており、テクノシーンやクラブカルチャー界隈に不安が広がっている。

 延長計画が持ち上がっているのは、ベルリン中心部の一部を囲む、完全なリングを構成していないA100。今後数年で、東部のトレプトウ公園(Treptower Park)からシュプレー川(Spree River)を渡り、クラブが集まるフリードリヒスハイン(Friedrichshain)に向かって北に延伸される予定だ。

 市内のクラブやカルチャーイベント主催者のネットワーク「ベルリン・クラブ・コミッション(Berlin Club Commission)」によると、この計画で、人気のクラブ5店舗の存続が危ぶまれている。

 その中には、テクノクラブ「アバウト・ブランク(About Blank)」や、LGBT(性的少数者)コミュニティーの拠点「レナーテ(Renate)」などが含まれる。

 クラブコミッションの広報、ルッツ・ライヒセンリングさんは「どのクラブも20〜30年前からこの場所にあった。こうしたクラブのおかげでベルリン(のクラブカルチャー)の知名度が高まり、この街も愛されてきた」とAFPに語った。

 クラブコミッションは9月上旬、計画中止を呼び掛けるためのレイブ(パーティー)形式の抗議行動に協力した。

 延長計画のルート沿いに仮設ステージが設置され、テクノ音楽が鳴り響く中、大勢がプラカードを手にして踊りながら抗議した。

■環境活動家も抗議に参加

「アバウト・ブランク」のオーナーの一人、エリ・シュテフェンさんは、「私たちは断固として抵抗する。交通量をこれ以上増やさず、気候に優しく、カラフルで多様性のある街づくりのために闘う意義はあると思う」と話した。

 気候変動対策を求める運動「フライデーズ・フォー・フューチャー(Fridays For Future、未来のための金曜日)」ドイツ支部のメンバーも抗議行動に参加し、環境への懸念を訴えた。

 広報担当のクララ・ドゥビニョーさんは、「A100の建設は絶対に阻止しなければならない。社会的な理由からだけではなく、高速道路は気候危機を招く大きな要因になっているからだ」と語った。

 A100の延長計画が決まったのは、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)前政権下の2016年だった。

 オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相率いる連立政権は、いくつかの大規模なインフラ事業については環境への影響を再評価すると約束していたにもかかわらず、延長計画を進めるとしている。

 運輸省のバスティアン・パウリー(Bastian Pauly)報道官は先日の会見で、高速道路の延長は「将来的な交通量の増加に対応するために必要」だとの見方を示した。

 映像は2日に行われたレイブ(パーティー)形式の抗議行動。(c)AFP/Femke COLBORNE