■アマゾンの「アサイー化」

 アサイーは、先住民族が食用としてきた歴史がある。ブラジル北東部では食材として重要な位置を占めており、キャッサバの粉と一緒に食べたり、魚や他の料理と一緒に使われたりする。

 アサイーはここ20年間、ブラジル国内で人気を集め、ジュースとして飲まれたり、シャーベットにされたりするほか、果物やグラノーラと一緒に供される。

 ブラジルのアサイーとその関連商品の輸出量は、1999年の60キロから2021年には1万5000トン超に急増。ブラジル産アサイーの9割を供給するパラ州では、2021年に140万トン近くが生産され、州経済に10億ドル(1470億円)以上をもたらした。

 だが、アマゾンでのアサイー栽培の拡大は、他の植物から置き換わることで、一部地域で生物多様性の低減を招いている。ベレンにある研究機関の生物学者マドソン・フレイタス氏は、「自然状態なら1ヘクタールに生えるアサイーの本数は50~100本だ」とした上で、「200本を超えると、他の原生種の多様性が60%失われる」と説明した。

 同氏はそうした現象を「アサイー化」と呼び、関連論文を発表した。他の植物種が失われれば、ミツバチやアリ、ハチなど受粉を媒介する昆虫の減少によりアサイー自体にも悪影響を及ぼす。また、アサイーは雨期に冠水する土地で育ちやすいため、気候変動で助長されているとみられる、アマゾンにおける乾期長期化の影響も受けている。

■地元に補償を

 ディオゴさんと同じコミュニティーに住むフレイタス氏は、単一作物栽培に対抗するにはより強力な保護法と監視が必要であり、熱帯雨林保護に向け農家にインセンティブを与えることも欠かせないと話した。

 地元指導者のサロマン・サントス氏も、アサイーが増え過ぎれば問題になりかねないと語る。「アマゾンに住んでいる私たちは、一つの種だけに依存できないことを知っている」と言う。

 サトウキビやゴムといった一次産品の人気が高まり、そしてバブルが突然はじけた過去の事例が、サントス氏の記憶にある。二酸化炭素(CO2)を大量に吸収するアマゾンを保護する地元住人らには、補償が必要だと主張する。「われわれは環境面で世界に多大な貢献を果たしているのだ」(c)AFP/Eugenia LOGIURATTO