■水素輸出をリード

 サウジアラビアは、5000億ドル(約73兆7000億円)を投じて紅海に未来型巨大都市「NEOM」を建設中だ。そこには、世界最大のグリーン水素生産施設が設置されることになっている。

 当局者によると、総工費84億ドル(約1兆2400億円)の水素生産施設では、太陽光と風力を使い、1日当たり最大600トンのグリーン水素が製造される。

 アラブ首長国連邦(UAE)は7月、新たなエネルギー戦略を決定。2031年までに水素生産量で世界10位以内を目指す方針を設定した。UAEでは今年、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が開催される。

 一方、湾岸地域におけるグリーン水素生産でトップをうかがうのは、化石燃料生産ではサウジ、UAEの後塵(こうじん)を拝しているオマーンだ。

 国際エネルギー機関(IEA)は6月に公表した報告書で、2030年までにオマーンは中東で1位、世界でも6位の水素輸出国になるとの見通しを示した。

 IEAによると、オマーンは水素の年間生産量を2030年までに少なくとも100万トン、2050年までには850万トンと、「現在の欧州における全需要量を上回る水準」に拡大することを目指している。

 コンサルティング会社デロイト(Deloitte)によると、中東諸国、特に湾岸諸国は目先、グリーン水素市場でけん引役となり、2030年までに生産量の半分程度を輸出に回す見込みだ。