【8月17日 AFP】米ハワイ州マウイ(Maui)の古都ラハイナ(Lahaina)で山火事が発生し、甚大な被害が出る中、地元の著名シェフらが自分たちにできる精いっぱいの支援に乗り出している。

「料理には人を癒やす力がある」と話すのは、ハワイ料理の顔として全米で知られるマウイ島在住のシェフ、シェルドン・シメオン(Sheldon Simeon)氏だ。

「自分たちなら、温かい食事を出すことができる。缶詰めではなく、ハワイならではの料理を」と話した。「料理が少しでも癒やしのきっかけになればうれしい」

 山火事による死者は15日時点で100人を超え、当局はさらに増えるとの見通しを示している。

 焼け出された1400人以上の住民は現在、避難所や親戚の家に身を寄せるか、車中で夜を過ごしている。

 当局の対応の遅れに対する批判が高まるなか、地元の人々は独自の取り組みを開始した。

 ラハイナ北方約50キロのカフルイ(Kahului)にあるハワイ大学(University of Hawaii)調理学科の厨房(ちゅうぼう)は、慌ただしい空気に包まれていた。

 料理を並べたたくさんのトレーがあっという間になくなっていく。その横で、大勢のボランティアが料理を小型の容器に詰めている。

 シメオン氏ら一流シェフらは、自宅が全焼し、ラハイナにとどまっている人々に食事を提供するため、3交代制で働いている。

「(火事で)自宅を失ったシェフもいるが、私たちと一緒に地元のために料理をしてくれている。これぞ『アロハスピリット』だ」とシメオン氏は語った。

■一日に約9000食を調理

 シェフとボランティアは、一日に約9000食を調理し、容器に詰める。

「大型のレストランや厨房(ちゅうぼう)で働いてきたが、これほど大量の料理を目にするのは初めてだ」と、シェフの一人、テーラー・ポンテ(Taylor Ponte)氏は言う。

「養豚業者から肉が1800キロ届く。アラスカからはサーモンが900キロ届いたばかりだ。地元で採れたスイカをたくさん届けてくれる人もいる。とにかく、食材が大量にある」と付け加えた。

 メニューは、手に入った食材を基に考えらえるが、常に地元らしさが加えられる。昼食は、地元の魚を使ったタイカレー。夕食はマカロニチーズのボロネーゼ風ソースがけだった。

 救世軍(Salvation Army)のメンバーやボランティアが受け取った料理は、避難所やラハイナで、まだ温かい状態で届けられる。

 昼食を終える間もないうちに、夕食を準備する時間になる。

 ボランティアの数が増え、シェフが休憩を取れる時間は増えたが、それでもシフトに入る時間は長い。

 しかし、青いエプロン姿のポンテ氏が愚痴をこぼすことはない。

「私たちはだ疲れているだけだ。でも(被災した)彼らは疲れている上におなかをすかせ、帰る家もない」と話した。「私たちシェフに寝ている暇はない」

 映像は13日撮影。(c)AFP/Paula RAMON