【8月16日 AFP】北朝鮮の国営メディアは16日、韓国から南北軍事境界線を越えて北朝鮮に入った米兵トラビス・キング(Travis King)2等兵について、「米軍内での不当な扱いと人種差別」から逃れるため北朝鮮に侵入したと報じた。北朝鮮がこの問題を報じるのは初めて。

 キング氏は先月、懲戒処分を受けるため米国に移送される予定だったが、韓国ソウルの空港から逃走。軍事境界線がある板門店(Panmunjom)の共同警備区域(JSA)の見学ツアーに紛れ込み、越境した。

 米国はこれについて、キング氏は意図的に無許可で越境したと説明していた。

 朝鮮中央通信(KCNA)は、政府が16日、キング氏が「不法侵入した」と発表したと伝えた。

 同氏は「米軍内の非人道的な扱いと人種差別に反感を抱き、朝鮮人民共和国への越境を決めたと告白した」「不平等な米社会に幻滅したと話しており、共和国もしくは第三国に亡命する意思を示している」と報じている。また、兵士に対する調査は続けられているとしている。

 国連軍司令部(UN Command)は先月、キング氏をめぐり北朝鮮との対話を開始したと発表している。国連軍は米国が指揮を執る多国籍軍で、1953年の休戦協定の維持を担う。

 一方、米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は、北朝鮮に接触したが、キング2等兵の所在や状態などについて一切把握していないと話していた。(c)AFP/Cat Barton and Claire Lee