【8月12日 AFP】韓国ソウルで11日、大規模なKポップフェスティバルが開催され、ボーイスカウト・ガールスカウトの祭典「世界スカウトジャンボリー(World Scout Jamboree)」に参加していた数万人のスカウトも一堂に会してイベントを楽しんだ。同国政府は、問題が多発した同大会のイメージを「韓国文化の力」で回復しようと試みている。

 4年ごとに開催されるジャンボリーは先週、全羅北道(North Jeolla Province)で開幕。4万3000人が参加していたが、前例のない猛暑で熱中症患者が続出した上、キャンプ地の環境も劣悪と報告され、米国と英国の派遣団が会場から撤収。さらに台風の接近を受け、全面撤収を余儀なくされていた。

 参加者は韓国各地に分散し、政府主催の文化行事に参加していたが、「NewJeans」や「The Boyz」など主要アーティストが出演する「Kポップスーパーライブ(K-pop Superlive)」コンサートには全員が集まり、グランドフィナーレを飾った。

 参加者の多くはカラフルなレインコートを着て、出演者らと一緒に歌ったり、踊ったり、ペンライトを熱心に振り、Kポップスターをスマートフォンで撮影。カメラに自分たちの顔が捉えられ、大きなスクリーンに映し出されると歓喜していた。

 文化省によると、人気音楽グループ「BTS(防弾少年団)」のフォトカードが、所属事務所のHYBE(ハイブ)によって参加者全員に無料配布された。地元メディアによると、小売価格で総額8億ウォン(約8700万円)分に上る。

 しかし、韓国のイメージダウンにつながったジャンボリーを立て直すために多額の緊急資金を投入するという政府のやり方には、Kポップファンや政府系機関の職員から批判が噴出している。

 人気音楽番組は理由を公表せずに突然中止となり、出演予定だったグループがジャンボリーでパフォーマンスを行った。

 また、ソン・イルジョン(Sung Il-jong)議員は、現在兵役に就いているBTSのメンバーに休暇を与え、短期間だけ活動を再開させるべきだと発言し、Kポップファンから非難を浴びた。

 Kポップコラムニストのチェ・イサク(Choi Isak)氏はX(旧ツイッター〈Twitter〉)で、政府の方針は「国家がKポップを所有するという全体主義的な恐ろしい考え」の表れだと指摘した。

 聯合(Yonhap)ニュースによれば、韓国産業銀行(Korea Development Bank)や韓国電力公社(KEPCO)など政府系機関の職員約1000人がコンサートの手伝いに「動員」された。

 韓国金融業界の労働組合は、「『協力要請』という言葉が使われているが、戦時中の強制徴用も同然だ」と怒りをあらわにしている。(c)AFP