【8月22日 AFP】チュニジア政府は20日、欧州風のパンやペストリーを製造するベーカリーに対する政府補助金が支給されている小麦の販売を再開すると発表した。ここ2週間続いていたパン不足の悪化が改善することが期待される。

 フランスの植民地だったチュニジアでは、伝統的なパンよりも高い価格の欧州風のバゲットやペストリーなどを製造するベーカリーは「モダンなベーカリー」と呼ばれており、材料の一部に政府補助のある小麦粉を使っている。

 経済・計画省は8月上旬、民間の「モダンなベーカリー」約1500軒について、過去10年以上続いてきた補助金が支給されている小麦粉の購入を禁止した。

 こうしたベーカリーで働く人は全国で約1万8000人いるが、8月に入り操業できない状況が続き、多数のベーカリーが閉店の危機にさらされていた。

「モダンなベーカリー」組合のモハメド・ジャマリ(Mohamed Jamali)会長はAFPに、バゲットを作ることが禁止されたと訴えた。

 カイス・サイード(Kais Saied)大統領は7月下旬の動画演説で、「すべてのチュニジア人が食べるべきパンは1種類」だと主張。政府補助金が支給されている小麦粉を使って、バゲットなどの値段が少し高いパンを作っているとして「モダンなベーカリー」を非難した。

 補助金が支給されている小麦だけを使ったバゲットを販売するベーカリー3737軒は過去数か月、小麦粉不足に直面しており、店先には夜明けから長蛇の列ができる事態となっている。こうしたバゲットは1本190チュニジア・ミリーム(約9円)と1984年から変わらない値段で販売されている。

 エコノミストらは、今回の「パン危機」は政府の小麦粉の備蓄が不適切だったために起きたと指摘する。政府は生活必需品の購入を一元化している。

 エコノミストのエゼディン・サイデン(Ezzedine Saidane)氏は全責任は政府にあると話す。「政府が十分な小麦を購入しなかったため、小麦粉不足となっている。財政危機が起きているが政府はそれを認めたがらない」

 インフレにあえぎ、多額の負債を抱えるチュニジアに対し、卸売業者が前払いを求めたため、政府はベーカリーへの小麦粉供給量を調整せざるを得なくなったと、専門家は指摘する。

 約30人を雇用するベーカリー経営者の女性はフェイスブック(Facebook)への投稿で、サイード大統領は「現状を理解していない」と批判した。

「私たちは金持ちではない」「私たちを分断させ、飢えさせようとして金持ちと貧乏人という話をしているだけだ。自分の権利を守るために刑務所に入る覚悟はできている」と強調した。(c)AFP/Ezer Mnasri and Francoise Kadri