【4月23日 AFP】ウクライナ南部ミコライウ(Mykolaiv)州で農業を営むビタリー・シドルさん(28)は、畑のあちこちに残るロシア軍の砲弾を自ら除去することに決めた。今年こそ作付けをしなければならないからだ。

「金属探知機を買って、インターネットで少し勉強した」と話した。防護用品はなく、従軍経験のある友人に助けてもらっているという。

 シドルさんの住むノボホリホリウカ(Novogrygorivka)村は、ロシア軍の前線から見える位置にあり、昨年3月からロシア軍が撤退した11月まで激しい砲撃にさらされた。

 今でも村には、さけた木や破壊された民家、黒焦げの車が残っている。

「どこを見ても穴だらけだ」と、シドルさんは被害を受けた納屋や機械を指して言った。父親と祖父が建てた家はいまやがれきの山だ。

 国内で最も肥沃(ひよく)なミコライウ州は重要な農地で、昨年作付けできなかった農家は今年こそは作付けをし、収入を得る必要に迫られている。

 地雷・不発弾の除去活動に取り組む国際団体とウクライナ軍、警察は地雷・不発弾の除去を進めているが、範囲は広大だ。このため、甚大な損失を取り返したい一部の農家は自らの手で除去作業を始めた。

「長くは待てない。いつ(専門チームが)ここに来てくれるのか誰にも分からない」とシドルさんは話した。不発弾の見つけ方については、インターネットで他の農家と情報交換をしているという。

 ミコライウ州で地雷・不発弾の除去を行うNGO「ヘイロー・トラスト(The HALO Trust)」のジャスミン・ダン(Jasmine Dann)氏は「(爆発物による)汚染もしくは汚染の恐れがあるため」、今年は州の農地の半分が使えないと推定する。

 シドルさんのような農家による除去作業は「大きなリスクがある」と指摘。「見落とす危険があるだけではなく、ブービートラップが仕掛けられた地雷があるかもしれない」と警鐘を鳴らした。

 不安定な爆発物の場合、いじると爆発する可能性もあるという。

 ミコライウ州の一部では対人地雷が埋設されたが、地表には膨大な量の不発弾が残されている。

 シドルさんはブーツで破片を掘り返しながら「砲弾は農地全体に散らばっている。爆発したものも不発だったものも」と話した。

 シドルさんらは砲弾が爆発したものかどうかロープを使って確認する。「念のため長いロープを結んで、地面に伏せて、引っ張る。爆発する時はする。しなかったらラッキーだ」

 最も危険なのは、プラスチック製の容器と信管でできている対人地雷だと話す。「金属探知機が反応しないので、みんなプラスチック製の地雷を怖がっている」と指摘する。

 シドルさんと両親が経営する小さな農場には、すでに約100ヘクタール分の大麦が作付けされている。

 青い葉を指しながら「もちろん怖かった。ここは一番初めに自分たちで除去作業をした畑だ」と話した。「大量のロケットの破片もある。あまりにも深く地面に突き刺さっていて、トラクターでも引き抜けないことがある」

 シドルさんは大麦の種まきができたことに満足し、すぐにでもヒマワリの種をまきたいと思っている。

「10日ぐらいすれば、土が見えなくなって緑に覆われる」 (c)AFP/Anna MALPAS