■手頃な住宅を提供する狙いのはずが割高に

 マイアさんの実家はサンパウロ郊外の大きな一軒家だ。現在住んでいる16平方メートルのアパートの家賃は2300レアル(約6万8000円)。別のエリアならもっと広いアパートを借りられるが、実家と職場との近さを優先し、広さは諦めた。

 在宅での仕事を終えると、マイアさんは仕事机の下から小さなテーブルを引き出して食事を始めた。

「部屋が狭いと、いろいろな物を処分して、自分には何が必要かを改めて考えるようになる」と話す。

 友人たちと会うときはテラスを使う。新しいアパートでよく見られる共有スペースで、洗濯室やゲームルーム、コワーキングスペース、さらにペットの入浴スペースなどとして利用されている。

 不動産会社ロフト(Loft)のエコノミスト、ロジャー・カンポス氏は、サンパウロにはニューヨークや東京と同じように「極小物件」があふれていると話す。

 同市の都市計画課によると、新型コロナウイルスの流行で金利が急低下し、賃貸用の小規模アパートが購入しやすくなったことでその傾向に拍車が掛かった。さらに、14年に小規模アパートの建築にかかる税が引き下げられたことも後押しした。

 そもそもの狙いは、公共交通機関の発達した地域で富裕層以外にも手頃な住宅を提供することにあったが、結果は逆となった。

「30平方メートル以下のアパートは、平米数当たりで最も割高になっている」とカンポス氏は指摘した。

 市議会は最近、都市計画の修正で合意。家族向け住宅を増やすために、極小住宅の建築税を引き上げる方針だ。(c)AFP/Lujan Scarpinelli