【7月15日 AFP】西アフリカ・ニジェールの北東部にあるサハラ(Sahara)砂漠を進み続けると、サヘル(Sahel)地域(サハラ砂漠の南縁部)で最も見ごたえのある、息をのむような光景の一つが目に飛び込んでくる。塩と粘土でできた、要塞化された集落の遺跡だ。

 誰がこの集落を造ったのか?いつ?何のために?多くの謎はいまだ解明されていない。

 ニジェールのファシ(Fachi)には、こうした集落がいくつも点在している。集落は「クサール(ksars)」と呼ばれているが、その詳細についてはほぼ分かっていない。

 地域社会におけるファシの伝統的首長は「私たちが聞いているのは、トルコからやって来たアラブ人が、要塞を建設するというアイデアを当時の人々に伝えたということ。その結果、この要塞が築かれ、ここに存在している。頑丈で、これまでのところ持ちこたえている」と話した。建設された時期については「200年以上はたっていると推測できる」とした。

 ファシの北にあるジャド(Djado)には、岩の上に建つ壮大な要塞がある。地元住民らは、この要塞で観光客を呼び込めると期待を寄せる。

 ただ、麻薬や武器の密売が盛んに行われている地域でもあるため、ここまでたどり着くのは、よほど覚悟を決めた人に限られる。

 地元当局の関係者は、「今、本当に必要なのは観光だ。治安の悪さから、結果的にこの地域は要塞を(観光資源として)活用できていない」と話した。

 地元の人々は、塩と粘土でできた遺跡が雨ざらしのままで適切に保護されていないと指摘する。また、ジャドの要塞をめぐっては、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産の暫定リストに記載されたまま、2006年以降は放置されているのが現状だ。

 ユネスコの認定はファシの遺跡でも期待されている。ファシの伝統的首長は「(ファシの要塞を)ユネスコの世界遺産に登録することは必要であり、本当に重要なことだと常に言われている。要塞を通じて、私たちは団結する。要塞は私たちの文化と歴史の一部だ」と話した。

 これらの遺跡をめぐっては、その謎を解明するための考古学的な発掘や科学的な調査は、これまで実施されたことはない。

 映像は今年5月に撮影。(c)AFP