【7月21日 AFP】ウクライナ東部ハルキウ(Kharkiv)州の前線の塹壕(ざんごう)で、兵士とカラスの「マビック」が友情を育んでいる。

 みんなに愛されるマビックは、携帯電話や銃弾を盗んだり、隠したりするトラブルメーカーでもある。

「メージャー」のコールサインで呼ばれる兵士は今月初め、AFPの取材に対し「3月ごろに、(マビックを)この拠点の近くで見つけた。カラスは幼いうちに巣から追い出されて、自分だけで環境に適応し生きていくらしい」と話した。

 マビックという名は、ウクライナ軍が偵察用として使う民間ドローン「マビック3(Mavic 3)」からとられた。自分たちにとって「身近な物」から名付けたかったという。

 マビックは当初、跳ねて移動していた。飛べるようになったのは1か月ほど前からだ。だが、マビックは飛べない時も「ものすごく速くて機敏で、絶対に捕まえられなかった」とメージャーは言う。

 電話やライター、たばこ、お茶、コーヒー。置いてあるのは何でも持って行ってしまい、兵士らは捜し出すのに苦労している。「固定されていないものはすべて引っ張り出されてしまう」

 別の兵士、ルスランさんは「とんだ害獣だ。みんな、やつのいたずらのせいで泣いている」と言った。

 ルスランさんによると、マビックは他の拠点にも現れ、ソーセージや肉など「寄付」を集めて回っている。

「きのうは(別の拠点に)飛んで行き、ナイフを取ったらしい。面白いことに、刃じゃなくて持ち手の方をくわえていたんだ。何をされるか分からないので、みんな恐れおののいた。でもカラスはカラスだ。鳴こうとして、ナイフを落としてしまった」と笑いながら語った。

「歯医者」と呼ばれる兵士は、マビックは「完全に制御不能」だと話した。「身支度もままならない。靴下を脱いで横に置いておくと、1分もたたないうちに持ち去ってしまう」 (c)AFP