【6月29日 AFP】ウクライナ東部、ロシア軍の拠点から数キロメートルの場所で、ウクライナ部隊は灰色の無人機(UAV)を素早く準備し、雲の高さと周囲を偵察するため離陸させた。

 第45旅団に所属する無人機部隊は、砲手に正確な情報を伝達するため国産の偵察ドローンを活用している。標的に向けてより正確に照準を合わせることができれば、砲弾の節約につながる。

 無人機部隊の一人、アンドリーさん(31)は「わが軍の砲手は、砲弾を節約する必要性から、『狙撃モード』で仕事をする」と話した。つまり、極めて正確に撃たなければならないということだ。「わが軍には、ロシア軍ほど多くの砲弾はない」

 国産無人機の活用により、命中精度は上がっている。だが、国産無人機は安価ではない。隊長のデニスさん(30)によると、部隊が使う「レレカ100(Leleka 100)」は、一見すると模型飛行機のようだが、1機約3万7500ユーロ(約590万円)と高額だ。

 アンドリーさんは、国内の非公表の場所で製造されているというレレカ100について、「高度1000メートルで運用している。もっと高く飛べるが、カメラや画質の問題があるから」と説明した。

 西側諸国で製造される無人機ほど高品質ではないが、国内メーカーから簡単にスペアパーツを購入できるところが強みだとしている。

 民生用の小型ドローンとは違い、こうしたより大型の無人機は2〜3時間継続飛行することができる。だが撃墜は避けられず、飛行回数は平均20回にとどまる。

■産声を上げたばかりの産業

 部隊は、無人機を使った攻撃ではロシア軍が有利だと理解している。アンドリーさんは、ロシア軍は安価なイラン製自爆型無人機「シャヘド(Shahed)」を何機も飛ばし、1機でも標的に当たればいいという考えだと指摘する。

 また、ロシア製の自爆型無人機「ランセット(Lancet)」も、「ウクライナの砲撃部隊を相当効率よく壊滅させている」と言う。ウクライナは、同様の攻撃型ドローンの製造には至っていない。

 アンドリーさんは、国内メーカーも「努力はしているが、依然試作段階で、経験が不足している」と指摘する。それでも部隊長のデニスさんによると、自宅ガレージでUAVを手掛ける人は多いという。

「ウクライナのドローン産業は産声を上げたばかりだ。成長させるには投資しなければならない」とアンドリーさんは話した。(c)AFP/Anna MALPAS